こじれる教団との関係。そして元カルト教祖とのコラボ
教団は、
退職したとする宏洋氏の主張は事実ではなく休職扱いであると主張(1年近くたった
2019年6月になってから宏洋氏を懲戒免職したと発表した)。ウェブサイト上で宏洋氏への批判を展開し、一方で教団関係者と弁護士が宏洋氏の自宅を訪問したり、抗議文を送付したりした。また宏洋氏がYouTubeに投稿した動画が教団の抗議により削除されたり、宏洋氏のアカウントごと削除されたりした。
宏洋氏は当初、教団や大川総裁を批判はしつつも「アンチ活動」をするつもりはない旨の発言もしていた。しかし教団からの威嚇的な対応が続く中で、宏洋氏はその経緯をYouTubeなどで公表し、教団や大川総裁への批判を強めていった。
2018年の
宏洋氏のYouTuberデビュー以来、宏洋関連の教団の声明文や告知は教団公式サイト上に93本もある(うち、宏洋氏の手記が出版された3月12日以降のものは10本)。幸福の科学では2011年にも大川総裁と当時の妻・きょう子氏との離婚をめぐる騒動があり、教団はきょう子氏を激しく非難した。しかしきょう子氏に関する教団公式サイトの声明文等は6本だけだ。
今回の手記が発売される以前からすでに、幸福の科学にとって「宏洋氏問題」は、かつての「きょう子氏問題」にひけを取らない大問題となり、また長期化していた。
YouTuberデビュー後、宏洋氏は「えらいてんちょう」と名乗るYouTuberとコラボするようになる。この点について教団はこれといって反応していないが、逆に幸福の科学を批判する元信者の一部から宏洋氏が批判される要因のひとつとなった。
えらいてんちょう氏の本名は矢内東紀(やうちはるき)。「宮内春樹」の名で、2012年に神の声を聞いたと称して宗教団体「ダールルハック」を設立した元教祖だ。イスラム学者・中田考氏が、矢内氏を「本物」の預言者として扱った。
「ダールルハック」で矢内氏は、信者に大学や仕事をやめさせて布教活動を行わせたり、自殺を煽る内容をSNSで発信するなど、カルト的な要素がある宗教団体だった。自身のブログによればダールルハックは5年ほどで崩壊。本人はとくだん反省を表明するでもなく、2016年に開業したバー「エデン」でのイベントやYouTubeで、カルトを含め様々な宗教をネタにするようになった。「宗教マニアが選ぶ入るべき宗教ランキング」などと称してYouTubeで幸福の科学を「平和的な宗教」として挙げたこともある。
矢内氏が宏洋氏にSNSでコラボを呼びかけた際には、私自身、矢内氏の経歴、教祖時代の行いへの反省のなさ、YouTubeで語る内容のいい加減さなどからSNSで宏洋氏に注意を呼びかけた。
しかし宏洋氏は矢内氏の動画に出演したり「イベントバーエデン」で1日店長を務めたりするようになる。幸福の科学を批判するいわゆる「アンチ」からは批判や落胆の声が挙がった。
宏洋氏は「アンチ幸福の科学」の人々がブログはTwitterなどで発信した情報を参考にしたと思われる内容で幸福の科学について語る場面も多い。YouTuberの世界では珍しいことではないのかもしれないが、情報の出典は示さず、さも「自分が知っていること」のように語る。
それでいて、細部で事実関係の間違いが散見される。
「適当にネット情報をつまみ食いするだけで、きちんと確かめようとしていない」
「アンチ幸福の科学」の人々の間から、そんな声が漏れ聞こえるようになった。注意を促すメッセージを所属事務所の「宏洋企画室」などに送っても、返事は来ないし、注意を参考にして行動を改める気配も見られない。
こうした反応を示す「アンチ幸福の科学」の人々の中心は、SNS流行以前から「2ちゃんねる」や個人ブログなどで幸福の科学批判を続けてきた年配者たちだ。私は勝手に「古参アンチ」と呼んでいる。
彼らは匿名ではあるが、より正確な根拠を伴った批判を目指してきた。批判の正当性を示すために、教義、大川総裁の言動、教団の行動などについて、その矛盾を示す根拠を教団の膨大な書籍や映像から引っ張り出してくる。私自身、彼らから多くのことを学び、これまで書いてきた記事もかなりの部分がこうした「証拠」に支えられている。
こうした姿勢は、YouTuberの「ざっくりしたテキトーな説明と煽り」という文化とは相容れない。
今年1月には、宏洋氏はTwitterに動画を投稿。幸福の科学の信者が携帯する手帳サイズの経文『正心法語』を床に叩きつけ「メンコ」だと語る内容だ。同席した人物がその場で障害者手帳も床に叩きつけた。
〈隆法チャンがまだ神じゃなかった頃の幸福の科学の旧版経文『神理の言葉 正心法語』&障害者手帳でめんこ大会!!\(^o^)/\(^o^)/〉(宏洋氏の
Twitterより)
このツイートに宏洋氏は「#正心法語めんこ #障害者手帳めんこ」というハッシュタグをつけて投稿した。
宏洋氏の人生を振り回した宗教の象徴である『正心法語』はともかくとして、障害者手帳を巻き込む悪ふざけに、アンチ幸福の科学からも批判の声が挙がった。