大川宏洋氏の手記『幸福の科学との訣別〜私の父は大川隆法だった〜』(文藝春秋)
幸福の科学教祖・大川隆法総裁の長男で2018年に教団を離脱した宏洋氏の手記が3月12日、文藝春秋社から発売された。タイトルは『
幸福の科学との訣別〜私の父は大川隆法だった〜』(1,540円)。幸福の科学の内情や大川総裁とのエピソードなどを綴った、いわば「暴露本」だ。
これに対して幸福の科学側は、同日に公式サイトに長大な反論文を掲載(
宏洋氏と文藝春秋社の虚妄を正す『幸福の科学との訣別』宏洋著(文藝春秋刊)への幸福の科学グループ見解)。機関誌
『ザ・リバティ』のサイトにも批判文を掲載し、YouTubeの「
幸福の科学 広報チャンネル」には「宏洋はなぜ堕ちてゆくのかシリーズ」と銘打った動画5本(3月15日時点)を公開した。また15日には、「大川隆法総裁臨席のもと、大川家の関係者三十数名が真実を語ります」(公式サイトより)と称する6時間にも及ぶ「宏洋本への反論座談会」の映像を全国の教団施設で公開した。反論書籍2冊を出版予定であることも発表した。
ところが、3月14日に教団は『ザ・リバティ』のサイトに掲載した記事を削除。YouTube動画も3本、削除した(同日のうちに再掲されている)。おかげでTwitter上では幸福の科学の元信者やウォッチャーたちが「何か教団に都合が悪い内容を公表してしまったのではないか」とばかりに、削除された記事や動画の検証作業で盛り上がっている。
2000冊を超える著書がある大川総裁と教団が、宏洋氏のたった1冊の手記を前に大騒ぎ。一体何がどうなっているのか。これまでの流れを整理してみよう。
宏洋氏は1989年に大川総裁と前妻・きょう子氏の長男として生まれた。大学在学中に2009年公開のアニメ映画『仏陀再誕』の脚本を担当し、2012年公開『ファイナル・ジャッジメント』の脚本やプロデュースを担当。卒業後は宗教法人幸福の科学の理事長や学校法人幸福の科学学園の副理事長を歴任した。
その後、教団の施設建設を受注していた清水建設に出向。教団に復帰後の2016年に教団の芸能事務所ニュースター・プロダクションの社長に就任し、2017年公開『君のまなざし』では総合プロデューサー、脚本、出演。2018年公開『さらば青春、されど青春。』で主演した。
関わった映画は全て教団の映画。『さらば青春、されど青春。』は大川総裁の自伝をベースとしたフィクションで、宏洋氏は父・大川総裁にあたる主人公を演じた。同作は2017年に芸能界を引退し「出家」した女優・清水富美加の出家後初出演映画でもある。
しかし同作公開より前の2017年末。宏洋氏は突然、ニュースター・プロダクションを退職する。年明け1月8日に宏洋氏はInstagramにこう投稿した。
〈
ニュースタープロダクションの皆様に、お別れのメッセージを贈らせていただきます。もう会って話すことも難しいでしょうし、グループLINEもすぐ消されてしまう可能性があるので、SNSでのお伝えになってしまうのを許して下さい。〉
同じく幸福の科学信者でもある事務所の仲間たちへの挨拶すら満足にできない形での退職だったことがうかがえる。
2018年5月に『さらば青春、されど青春。』が公開された3カ月後の8月。宏洋氏は「YouTuberデビュー」を果たし、こう語った。
〈
幸福の科学の職員を辞めています〉
〈
幸福の科学の信者ではありません。信者ではないんです〉
〈
私は大川隆法総裁を信仰していません。彼のことを神だと思ったことは一度もありません〉
なぜ宏洋氏は幸福の科学をやめたのか。それは今回出版された手記を読んでほしい。