鉄道歴史パークで「フリーゲージトレイン」の車内を見学してみた<コロラド博士の鉄分補給>

フリーゲージトレインは技術者の食い扶持稼ぎと政治的毛針

 筆者は、フリーゲージトレイン計画が立案された当時から、フリーゲージトレインは性能、運用、費用の三点で国内での実用可能性は無く、技術者の食い扶持稼ぎと政治的毛針であると看破していましたので、25年も無駄にしたことに呆れかえっています。近鉄京都・橿原・吉野線を走る程度なら経済性さえ無視すればなんとかなるでしょうが、これも橿原神宮駅で対面乗り換えするほうが遙かにマシです。  かわいそうに筆者の息子は、幼時からずっと「フリーゲージトレインはいつ高知に来るのか?」「永遠に来ない。」という地獄の問答を繰り返すこととなりました。そのたびに悲しい顔をしますが、商業的に絶対に失敗する事業ですので仕方ありません。鬼親です。  車内は、在来線特急並みの広さですのでやや狭く、既に備品を取り外されて空っぽの計測器ラックの圧迫感が強いです。  子供達は、運転士席に座って大喜びですが、交代にはなかなか時間がかかります。空調は効いていますが、20分近く並び続けてようやく筆者の順番となりました。後ろにまだ子供達がいますので、あまり占有できませんから急ぎます。
やっと入れた運転台

やっと入れた運転台2019/11/23撮影 牧田寛
20分弱並んでやっと運転台に入れました。係の方が一組ずつ案内してくれます。
運転台は、新幹線と在来線のハイブリッド感があります。
座席は子供にあわせて調整しているので、私が座ると箱入りハムスターの様にはまりこんで動くのがたいへんでした

運転席から見た風景

運転席から見た風景2019/11/23撮影 牧田寛
立って撮影していますが、視界は余りよくありません。
なぜか神社のお守りが・・・・・

運転席左側正面の計器類

運転席左側正面の計器類 2019/11/23撮影 牧田寛
新幹線と在来線の電源や信号を切り替えるので電光スイッチがとても多くなっている

運転席左手のスイッチ群

運転席左手のスイッチ群2019/11/23撮影 牧田寛
運転室の空調制御が軽トラック並みの簡素さでびっくりです

運転席右手のスイッチ群

運転席右手のスイッチ群2019/11/23撮影 牧田寛
新幹線のATC関係がとってつけた感じを出していて素敵です。
奥はスマホホルダに見えて仕方ありません

 ようやく運転台に入リましたが、あいにくの西日でかなり写真撮影は難しい条件でした。運転台の座席は子供向けに設定されているので筆者が座るとはまりこんで体が自由に動きません。しばし満喫して、室内を見回しますと保存状態は上々です。  新幹線と在来線を走りますので、ATCやATSなどの信号・自動制御装置や電気系はそれぞれの規格への対応のために多重化されておりこれだけもかなりの高コストですし勿論重くなります。在来線だけでもATSと電化方式の規格が多いことは重荷です。  運転台からの見晴らしは余りよくないので、地方の在来線を走るときはけっこう気をつかうのではないでしょうか。長年の私設踏切(野良踏切)から子供が飛び出してきたら見えそうにありません*。計器は、液晶表示装置に多くはまとめられていて運転台正面は、今風にかなりスッキリしています。初代試験車両とだいたい同じ配置です。残念ながら軌間可変機構に関する制御器を見つけることはできませんでした。尤も、軌間変更は、線路側の軌間遷移装置で行われます。 〈*かつて土佐山田で幼児が轢死する事故があり、踏切の設置運動に署名したのですが、後免・土佐山田間のすべての野良踏切を封鎖すると言う結果となりました〉  残念ながら、後ろに子供連れの組がまだたくさんいましたので早々に運転室を引き上げて降車しました。  後日、写真を見て気がついたのですが、なぜかサンバイザーに神社のお守りがついていました。  鉄道好きならばいちどは座ってみたいフリーゲージトレインの運転台ですが、現在座ることができるのは西条での年に数回だけです。四国島内の子供にはとてもうれしいイベントではないでしょうか。

フリーゲージトレインとは

 外に出るとまだ15時前ですが、すっかり人が減っています。なぜか四国の鉄道系イベントは15時で終わるのが標準のようです。イベントそのものは新型特急車両の試乗などまだ継続していますが、フリーゲージトレインの車内見学は、終わりが近づいています。  フリーゲージトレイン第二世代試験車両の周りをぐるりと回ると、やはり台車に目が行きます。この台車は、軌間遷移装置を通過することによって軌間(ゲージ、線路の幅のこと)を新幹線規格の標準軌(1435mm)と在来線規格の狭軌(1067mm)との間で切り替えます。これによって新幹線と在来線を乗り換えなく直通します。そもそもこの問題は、日本の鉄道黎明期に大隈重信が余り考えなく植民地向けの二級規格(狭軌1067mm)を取り入れたことが発端ともされますが、確たることは分かっていません。これに対し高速大量輸送用として建設された新幹線は、標準軌(1435mm)として建設され、全国新幹線鉄道整備法(全幹法,1970年)によって全国に敷設されることになったのですが、その後の石油危機、国鉄破綻、財政悪化によってフル規格の新幹線を敷設することを断念、在来線を活用するとになって軌間(レールの幅)が異なる新在直通ができないために着目されたのが軌間可変電車(フリーゲージトレイン)です。
フリーゲージトレインの台車

フリーゲージトレインの台車2019/11/23撮影 牧田寛
この車両を開発するおりに最も困難の多かった部位です。台車の機能、性能だけでなく、軽量化、耐久性などの課題解決に難渋しました。

 この新在問題を解決する手法としてはミニ新幹線(山形・秋田新幹線、在来線をそのまま標準軌化する)スーパー特急(新幹線に準ずる路盤の上に狭軌軌道を敷設、新軌道上時速200km、在来線走行可)フリーゲージトレインの3種類がありそれぞれ一長一短があります。  なお筆者は、国土軸(稚内から鹿児島まで)は、原則フル規格新幹線、枝線はスーパー特急という考えです。もっとも、九州新幹線鹿児島ルートなどで提案されたスーパー特急方式は、地元にたいへんに受けが悪く、なかったことにされています。狭軌が貧乏くさい上に乗り換えが必要と言うことが嫌われました。このスーパー特急方式が提案された直後、川内原子力発電所の見学に鹿児島を訪問したのですが、地元ではスーパー特急方式がたいへんに低評価であることにとても驚きました。  フリーゲージトレインは、軌道の新設が必要ない建前で、新幹線から乗り換え無しでそのまま在来線に乗り入れられることから、在来線軌道改良を伴えば安価に新幹線鉄道網を全国展開できるという考えで長崎新幹線、北陸新幹線、四国新幹線での導入が考えられました。その後北陸新幹線は、敦賀まで全線フル規格となりフリーゲージトレイン導入構想も断念、長崎新幹線も全線フル規格構想(但し当然佐賀県は同意せず紛糾中)となり、四国新幹線のみとなりました。四国新幹線事業化のめどは全くありませんので、フリーゲージトレインは宙に浮いた形となっています。  現在、近鉄京都・橿原・吉野線直通などの民鉄用途として開発は継続されています。
非公式側(左前)から撮影したフリーゲージトレイン

非公式側(左前)から撮影したフリーゲージトレイン2019/11/23撮影 牧田寛
既に乗車口は閉じられている。お客さんもほぼ捌けた模様

正面から撮影したフリーゲージトレインGCT01-201

正面から撮影したフリーゲージトレインGCT01-201 2019/11/23撮影 牧田寛
特別展示は終わりしきりが外されている。
右側に見えるのはミニレールの常設軌道

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かつて公開されていた第1次試験車両
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