残業月100時間が年0.02時間に減少。ブラック企業だった介護・看護施設運営企業が変わったワケ

マニュアルと面談を通じて、700人の医療職に企業理念を伝える

 組織が大きくなるとトップのビジョンが全社員に伝わりにくくなるリスクが懸念される。会社が定めた「ビジョン」「ミッション」「スピリッツ」を約700人の医療スタッフにどう伝えているのか。  同社が活用しているのが、「経営方針書」というマニュアルだ。北極星プロジェクトで作り上げた内容を盛り込んだ冊子で、A4で60ページほどある。仕事への心得や患者への向き合い方などがシンプルな表現で書かれている。毎朝10~15分ほど行う朝会では全員で1ページずつ読み上げることで、理念の定着を図る。
朝会で経営方針書を読み上げるスタッフ

朝会で経営方針書を読み上げるスタッフ

 また同社は現場との対話を重視しており、定期的にエリアマネージャーが管理者・スタッフと面談する。 「医療や介護業界には、奉仕精神が強い人が集まります。なので経営サイドが『残業を減らそう』と訴えても、現場からは『自分たちにはまだやることがあります』といった反発が起こることもあります。だからこそ対話を行い、現場スタッフの心情に寄り添いながら改革を進めています。また年に一度の経営方針共有会でトップの考えをシェアしています」  こうした取り組みを経て、残業時間は減少。離職率も下がっている。

現場に寄り添い、改善を続ける

 エーデル土山、ソフィアメディ株式会社に共通するのは、スタッフを第一に考えた施策を整えていることだ。介護業界では経営サイドがスタッフの「奉仕の精神」に甘えてしまい、労働環境の改善をしないケースがある。しかしそのままでは、現場で働くスタッフはいつか疲弊してしまう。  余力があるうちに不要な業務を廃止したり、スタッフの負担となっていることを突き止めたりして、現場が求める制度を作る。働き方改革を進める際には経営側の理屈を押し付けず、現場との対話を繰り返していく。 両社の「GOOD ACTION」の背景には、日頃からの努力があった。 <取材・文/薗部雄一>
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会