一帯一路とは中国型の権威主義と資本主義による「超国家的組み合わせ」
中国は一帯一路を推し進め、多くの国を影響下に置くことに成功した。
前回の記事で述べたように経済から始まり、ローンによって港などさまざまな設備を手にしただけではない。経済をてこにして、超限戦の「超国家的組み合わせ」を実現している。国家を超えた組み合わせによる戦いだ。
デジタル・シルクロードで参加国の情報インフラを抑え、そこから情報を収集する。メディアへの影響力を拡大し、文化から塗りかえる。その支配が進んでいることは、トランプが中国企業のHUAWEIの排除を口にした後に、アフリカ連合がHUAWEIを支持したことに如実に表れている。
中国国内においてはすでに超限戦を戦う基盤が確立されている。以前から中国人民政治協商会議を始めとして官民の力をコントロールする仕組みはいくつか存在していた。中国人民政治協商会議は中国共産党や民間組織などから構成される全国組織で、俳優のジャッキー・チェンなど文化人も委員になったことがある。主な中国企業も参加している。
グレート・ファイアウォールによってネットの検閲や欧米のフェイスブックなどのSNSを利用できなくしているのもその一環と言えるだろう。中国が欧米SNSでどのような世論操作を行っても同じ方法で報復攻撃を受けることはない(グレート・ファイアウォールのおかげで欧米SNSは国内では利用できず中国SNSは検閲できる)。欧米SNSが犯罪や差別やヘイトの温床になればなるほど、中国以外の社会の分断につながるので都合がよい。
2017年6月の国家情報法により、全ての国民と企業は政府の要請に応じて情報を提供する義務を負わされた。この法律によって中国政府は国内全ての情報資源を戦略的に利用できることになった。
欧米でも中国と同じことができた、と思うかもしれない。しかし欧米にはできない理由がある。まず中国は権威主義と資本主義の組み合わせが効果的であることを自ら経済発展することで証明した。それを見たアジア、アフリカ、ラテンアメリカの国々がチャイナモデルを有効と考えるのは当然だ。
中国の成功とは対照的に欧米型の民主主義的価値観を重んじるモデルが1990年以降アフリカに広がり、大失敗した(
『民主主義がアフリカ経済を殺す』2010年1月18日、ポール・コリアー/日経BP)。
歴史を学ぶ知恵のある人間なら旧宗主国の信奉する民主主義が時には猛毒となって政情不安を招くことを知っている。準備もなしに民主主義を導入するのはリスクにはなるだけでメリットはない。そして現在アジア、アフリカ、ラテンアメリカの多くで元首あるいはそれに近い地位にいる人々の身の保全を図れるのも民主主義ではない社会なのだ。つまり、どこから考えてもアジア、アフリカ、ラテンアメリカの多くの国にとって欧米型の民主主義はリスクが高く得るものがない選択肢となる、国民にとってはそうではないかもしれないが。
対超限戦において欧米の民主主義は致命的な弱点となる。そのことを中国にはよくわかっている。