「布団から出たくない」「脱衣所で裸になりたくない」と思う日本人、思わないドイツ人
この冬は全国的に暖冬と言われますが、それでも朝晩はぐっと気温が下がります。朝は「布団から出たくない!」とか、夜は「脱衣所で裸になりたくない!」とか思うこともあるでしょう。でも欧米の家でそういう体験をすることは、あまりないように感じています。その違いは何でしょうか?
では、1年ちょっと前に筆者が取材したドイツの例を取り上げてみます。ドイツでは、国が率先して省エネ改修(断熱改修)を進めています。例えば窓はペアガラスからトリプルガラスに変更、壁には20センチ以上の断熱材を外から貼り付けます。
このような流れは、国家レベルでエネルギーの輸入を減らそうという政策の一環ですが、一般家庭にとっても光熱費が減り、家も温かくなるというメリットがあります。ところが、どうにもわからない点がありました。
省エネ改修をした家に住んでいる方たちに「改修によってどれくらい日々の暮らしが温かくなりましたか?」と質問したのですが、どんなに質問を繰り返しても、誰からも「温かくなってよかった」という返事が返ってこないのです。
「え? 家を断熱したらすごくあったかくなるんじゃないの?」と筆者は混乱しました。でも、その背景にはきちんとした理由があったのです。
その答えをお伝えする前に、読者のみなさんに質問です。以下に、日本の家で冬によく使われている暖房機器やアイテムが4つ並んでいます。このうち、ドイツの一般家庭にないものはどれでしょうか?(正解はひとつとは限りません)
①ファンヒーター(燃料は灯油、ガスなど)
②ホットカーペット
③湯たんぽ
④暖房便座
正解は、「ぜんぶ」です。その理由は、ドイツの家庭では家中どこにいっても同じ室温で、極端に寒い場所がないためです。特にホットカーペット、湯たんぽ、暖房便座の3つは、部屋や体の一部分だけを温めるものです。部屋全体、あるいは家全体が温かければ必要なくなります。
暖房便座は日本で開発されました。確かに、トイレが寒いのが当たり前の日本ではありがたいものです。でも、トイレ全体が暖かいドイツでは誰もほしがりません。
そう考えれば暖房便座という機能は、トイレが寒いことは我慢しながら、せめてお尻だけでも温めたい……という日本人のささやかな願望の結晶のように思えてきます。ただエネルギー的には、誰も使わない便座を温め続けるのは浪費なので、できれば使わない仕組みを考えたいところです。
ファンヒーターはどうでしょうか? 隙間風の吹くような木造住宅では、エアコンで暖房してもなかなか暖かくなりません。そんなときファンヒーターは便利です。エアコンよりはるかに高い温度の温風を、足元から強く吹きつけてくれるので、周辺温度がすぐに上がります。
しかし、煙突のないタイプのファンヒーターの場合、家の中で焚き火をするようなものなので、どうしても空気が悪くなります。ファンヒーターの説明書にも、1時間に1〜2回は換気しないと危険と書いてあります。でも真冬の寒い時期にそんなことをする人はほとんどいません。
それでも健康被害がそれほど報告されていない理由は、日本の家に隙間が多い証拠です。基本的に気密性の高いドイツの住宅では、このようなファンヒーターは使えません。
断熱しても「温かくならない」家って?
ドイツの家にない暖房機器やアイテムは?
『「寒い住まい」が命を奪う ~ヒートショック、高血圧を防ぐには~』 家が寒いと光熱費がかさむだけではなく、健康にも大きな影響が… |
ハッシュタグ