中国はなぜアフリカで力を増しつつあるのか? アフリカにおける中国の「超限戦」的支配構造

アフリカの成長を牽引する中国

What China Is Really Up To In Africa」(2019年10月3日、Forbes)によればIMFはアフリカの家計消費は2025年までに2.1兆ドル(210兆円)まで増加すると予測している。そのアフリカ最大の貿易相手国は中国であり、貿易は年間2,000億ドル(約20兆円)を超えている。10,000を超える中国企業が活動し、2005年以降の中国ビジネスの価値は2兆ドル(約200兆円)を超え、投資は3,000億ドル(約30兆円)に達している。アフリカはまた、中国の海外建設契約の最大の市場としてアジアを上回った。中国はこの関係を強化するための基金や投資パッケージを投入している。  アフリカが必要としているインフラへの援助でも中国が他国に先んじている。2011年以来、中国はアフリカのインフラブームの最大のプレーヤーであり、ナイジェリアの沿岸鉄道への120億ドル(約1兆2,000億円)の投資、アジスアベバ-ジブチ鉄道への45億ドル(約4,500億円)の投資、バガモヨのメガポートと経済圏への110億ドル(約1兆1,000億円)の投資など、アフリカの主なインフラ開発は、中国とのパートナーシップによって行われているものが多い。  アフリカにおける中国の存在感の大きさを示すよい例がアフリカ連合との関係である。アフリカ連合は加盟国の政治と経済の統合を目指すアフリカ版EUであり、アフリカのほとんどの国が参加している。このアフリカ連合の設立当初から中国はさまざまな支援を行い、その発展を下支えしてきた。そのおかげで関係は強固だ。  2018年、アフリカ連合にあるHUAWEIの通信設備から中国にデータが送られていたことが暴露されてもその関係は変わらなかった。アメリカがHUAWEIを市場から閉め出そうとした時には、アフリカ連合は逆にHUAWEIとの関係を強化したほどである。(参照:ロイター、「Financial Times」)

アフリカのメディアとSNSを支配する中国

 中国の影響は政治や経済だけではない。メディアを通してアフリカの日常生活に深く浸透している。「How China is slowly expanding its power in Africa, one TV set at a time」(2019年7月24日、CNN)という記事はケニアの首都ナイロビの郊外の家で中国のカンフー映画を観ているところから始まる。その家には水道はなく、靴の修理で生計をたてている。わかりやすく貧しい風景だが、リビングに大きな中国製のパラボラアンテナがあるのがアンバランスだ。そのアンテナを通じて数百の中国チャンネルを安価に視聴できるのだ。  中国の習近平は2015年にアフリカにデジタル・テレビを普及させる「10,000 Villages Project」を発表した。それまで一部の富裕層の特権だったテレビを衛星を通じて貧しい家庭にまで普及させようとする計画である。この計画を実行した中国の企業StarTimesはアフリカの30カ国で1,000万の視聴者を得ることに成功した。  もちろんこれは慈善事業ではなく、ソフトパワーによってアフリカにおける中国の影響力を増大させる仕掛けのひとつである。日々、エンタメからプロパガンダまでさまざまな放送が中国からアフリカに流れ込んでいる。  中国は世界に向けてソフトパワーを増大しようとしており、アフリカも例外ではない。「Beijing’s Global Megaphone: The Expansion of Chinese Communist Party Media Influence since 2017」(2020年1月、Freedom House)はその目的は下記の3つだと指摘している。  ・中国と統治体制に対するポジティブな見方を広める  ・海外から中国への投資を推奨し、海外への中国の投資と戦略的提携を奨励する  ・中国への批判やネガティブな言説をなくす  同レポートでは、そのための方法論として4つをあげている。  ・現地の中国人移民のメディアと連携し、中国批判を抑える  ・相手国の情報インフラの中枢に関与する  ・SNSとデジタル・テレビ会社経由で中国政府よりの政治色のあるコンテンツを提供する  ・中国は他の国の模範とであることを広める  たとえばジンバブエ、ナイジェリア、リベリアの放送局に投資し、支援するなどの活動を行う他、メディア関係者に対するセミナーやトレーニングも提供している。フリーダムハウスの2018年の報告書によると調査対象の65カ国のうち36の国が参加していた。2019年のOpen Technology Fundの報告によれば2019年には世界中で75カ国に増えていた。また、南アフリカは中国に批判的な記事の検閲に協力している。  中国政府の先兵となってソフトパワーを世界に広げている主たる中国メディアは次の4つである。アフリカではこれにStarTimesが加わる。  ・人民日報(新聞) 日本語版:フェイスブックのフォロワー7,200万人  ・新華社(通信社):フェイスブックのフォロワー7,000万人 日本語版   ・CGTN(放送局) 日本語版:フェイスブックのフォロワー9,000万人  ・チャイナデイリー(英字新聞):フェイスブックのフォロワー8,400万人  中国国内ではフェイスブックなどのSNSは使用できないが、中国メディアはフェイスブックアカウントを作り、国外に多数のフォロワーを有している。  Pew Research Centerの2018年の調査「5 charts on global views of China」(2018年10月19日)によると、こうした中国のプロパガンダと検閲は効果を上げている。特に習近平のイメージはチュニジア、ナイジェリア、ケニヤでよかった。2016年にはガーナ、ケニヤ、ナイジェリア、セネガル、南アフリカ、ウガンダで中国のイメージとメディアの関係についての調査が行われ、中国メディアの存在感があり関係するメディアへアクセスする技術がより普及してるほど、世論は中国に対して好感を持つようになることもわかった。  だが、全てがうまくいっているわけではない。2018年から2019年にかけて中国のイメージははっきりと後退した。中国のムスリム教徒への対応が問題視されたのためで、この傾向はムスリム教徒の多いケニヤ、チュニジアで特に顕著だった。またガーナ独立放送協会はデジタル・テレビのインフラ構築のために中国のStarTimesと9,500万ドルと契約することに懸念を表明し、地元企業を使うように提言した。
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「超限戦」によって成長、拡大する黒い中国
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