伊方原発の重大インシデントで「臨界」はあり得ずとも、軽視してはいけない決定的な理由
PWRにおける制御棒クラスタ

伊方3号炉 炉心構造全体図
赤丸で囲まれた上部炉心構造物を引き上げた際に、本来上部構造物から切り離されているはずの制御棒クラスタ1本が上部構造物と一緒に引き上げられた。PWRではBWRとことなり制御棒駆動機構が原子炉上部にあるため、定検中や動力喪失時に制御棒は重力落下するため、受動安全性を持つ
伊方発電所3号機 原子炉容器上部炉心構造物吊り上げ時の制御棒引き上がりについて(続報)2020/01/13四国電力より引用

PWRの制御棒クラスタ
制御棒は、炉心で均一に中性子を吸収するために左のようにクラスタ化されている。
左の制御棒クラスタが、右側の制御棒駆動軸と接続され、上下に操作される。
定検時には、制御棒駆動軸と制御棒クラスタの連結が外れ、制御棒クラスタは重力で炉心に留まる。制御棒駆動軸と制御棒クラスタの連結はラッチで行われ、これは定検時に専用工具で解結される。
今回のインシデントでは、48本中1本の制御棒クラスタが、駆動軸との連結を解除されていなかったと考えられる
日本原子力研究機構(JAEA)より引用

制御棒クラスタと燃料集合体の関係
伊方発電所3号機制御棒挿入性の評価における応答倍率法の適用性2009/12四国電力より引用

制御棒クラスタと駆動装置、炉心上部構造物の位置関係
緊急時には、駆動装置の電磁石への通電が止まり駆動装置の電磁石が消磁することによって制御棒駆動軸は、重力落下する。これはBWRと異なり受動安全性に優れた高信頼のシステムである。
定検時にも駆動軸の電磁石への電力供給は止まっており、人間による解結作業によって制御棒クラスタと駆動軸は分離している。今回、制御棒クラスタ1本が、駆動軸から分離せずに上部構造物と一体になって炉心から引き抜かれた
伊方発電所3号機制御棒挿入性の評価における応答倍率法の適用性2009/12四国電力より引用
必須であるインシデントの完全解明
Twitter ID:@BB45_Colorado
まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中