大炎上した香川県の「ネット・ゲーム依存症条例案」。脊髄反射する前に考えたいこと

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bee / PIXTA(ピクスタ)

 先日、香川県議会が子どものスマホやゲーム機の使用を制限する条例案を検討することを明らかにしたところ、「とんでもない条例だ!」と脊髄反射する議員がたくさん出てきました。  とはいえ、この条例に脊髄反射する人たちの気持ちはわからないでもありません。どれだけスマホをイジろうと、どれだけゲームをしようと自由ではないかと。そんなところから未来のクリエイターが生まれるかもしれないんだから、お節介な条例を作るのではなく、個人に任せたらいいじゃないかという話なのだと思います。だけど、どうしてこういう条例案が考えられるようになったかって、子どもたちの健やかなる成長を願ってのことです。この条例にあるのは、お節介かもしれないけれど、県議会議員のオジサンやオバサンたちの「愛」です。もう少し冷静になって見てみましょう。

香川県がまとめようとしていた条例とは?

 香川県議会でまとめられようとしている条例の素案は「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)」です。2月に議会に提出され、4月の施行を目指していると言いますが、最近はネットやゲームの依存症になってしまう子どもたちが社会現象になっています。そこで、香川県では日本初となる、子どものスマホやゲームの時間を制限する条例を作ろうと考えたのです。  この条例では、18歳未満の子どもがいる保護者に対し、子どものスマホやパソコン、ゲーム機の使用を平日は1日60分、休日は1日90分まで。中学生以下は午後9時まで、18歳までは午後10時までにやめさせるように努力することを義務としています。ただし、「努力しましょう」というだけで罰則などがあるわけではありません。ちなみに、60分や90分という時間の根拠については、香川県で実施した学習状況調査などを参考にして適切な時間を定めたとしています。

田舎のオッチャンたちの無知と炎上

 この条例案が炎上したのには、いくつかの理由があります。まず、そもそも「家庭での過ごし方について政治が介入するな!」という問題があり、ただの努力義務を課すようなものであっても、家庭での過ごし方を定めるのは一線を越えていると受け取られるようです。  それに加えて、この条例案を提出しようとしている議員は「最近の親が長時間労働をしているので、子どもがゲームに依存する傾向にある」と主張しており、それなら子どものゲームではなく労働環境を変えるような政策を取るべきだと批判されています。  さらに、国会で「eスポーツを推奨しよう」という動きがあることに対し、「地方の現場を預かる者としては反対の方向に流れている」と真っ向から否定。そもそも「eスポーツのことをよく知らないんじゃ?」という疑惑まで持たれる始末で、ツッコミどころ満載です。  本当は子どもたちのことを思ってやっていることなのに、「うるせぇんだよ、老害!」と言われて、なんだか気の毒なんですが、条例案を出している方は確かにお年を召した方だという感じです。  なにせ、最近は親が制限時間を設定できる機能があったり、スマホでも利用を制限できたり、親が監視できたりする機能が設けられていて、業界としての努力も進んでいるところです。  その一方で、つい最近までガチャの確率がいかさまだったりして、ゲーム業界のモラルが問われているところなのですが、ガチャに対して無限にお金をつぎ込んでしまうシステムについては規制が遅れたままということもあります。なにしろ、今のIT担当大臣は79歳の竹本直一おじいちゃんで、こういった改革は遅れたままになっています。そんな中で、けっこう踏み込んだ条例を作ろうとしているので、反発を受けるのも無理がない状況ではあります。
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お節介な条例は必要なのか?
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