センター試験の果たしてきた役割とその課題<入試改革のあやまちを繰り返さないために3>

失敗から学ぶ今後の入試改革のありかた

マークシート 2020年度から実施される共通テストにおける数学と国語の記述式試験が見送られることになりました。多くの専門家と高校生の声によって、入試改革が正常化の流れに近づいたといえます。  しかし記述式を再度導入しようとする流れもあるなど、今後も予断を許さない状況です。この連載では、記述式の未練をしっかりと断ち切り、今後設計されるであろう入試改革について提言していきたいと思います。  今回は、センター試験がこれまで果たしてきた役割とその課題について説明します。

今、最優先ですべきこと

 大学入試に関して、今、最優先ですべきことは、来年の1月に実施予定の共通テストをセンター試験のままで実施することの発表です。現在の高校2年生は今後どうなるのかが未決定のまま新年を迎え不安に思っています。過去40年このようなことはありませんでした。  とりあえず「センター試験を継続すべき」とする理由は、共通テストの記述式が見送られたままでは試験にならないからです。数学の場合は「数学I」「数学I・数学A」に記述式が15点分出題される予定でした。したがって、記述式がなくなったままの試験では85点ということになります。85点満点では他教科とのバランス等も考えて不自然ですから、残りの15点をどのようにかしなければなりませんが、15点分を何に割り当てるのかなどの発表はありません。  国語の場合は、記述式も含めて時間も20分延長し、大問も1題追加される予定でしたが、記述式がなくなってどうするのかの検討が必要です。これは緊急事態なのです。新しい形式にするのであれば、もう一度試行調査からやり直すべきですが、そのような時間はありません。こうなってしまった以上、一番確実で安全なのが、センター試験の継続となります。今月の中旬の検討委員会を待ってからとは言っていられないはずです。まず、「来年度は、センター試験を継続する」と発表して、次の試験をどうすべきかにとりかかるべきです。とりあえずの「センター試験の継続」を主張する人がすべて「センター試験が万能である」と思っているわけではないことにも注意してください。
次のページ
センター試験の役割を再検討する
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会