現代ビジネス編集部掲載記事に本サイト記事コピペの疑い。編集部と著者・鈴木エイトの抗議に「盗用」は否定も記事を訂正の怪

HBOLと現代ビジネスに掲載された文章の比較

HBOLと現代ビジネスに掲載された文章の比較

 11月12日に講談社が運営するウェブサイト『現代ビジネス』が掲載した記事の中に、扶桑社が運営する本誌『ハーバー・ビジネス・オンライン』(HBOL)でジャーナリスト・鈴木エイト氏が執筆した記事中の文章をコピペしたと思しき文章が複数あった。執筆者は時任兼作氏。『現代ビジネス』と時任氏は記事掲載直後に鈴木氏から指摘を受けてもなお、問題箇所を訂正しないまま約1カ月間、掲載し続けた。  HBO編集部と鈴木氏が内容証明郵便で「盗用」「著作権侵害」と指摘し改善と経緯の調査等を求めたところ、『現代ビジネス』は12月18日に記事中の文章を訂正。しかし「盗用」「著作権侵害」とは認めず、「鈴木氏に不快の念を抱かせた」ことのみ謝罪する回答書をHBOに送付した。時任氏本人からの謝罪はなかったという。  漫画などの自社作品を守る場面では著作権を声高に口にし、たとえ「引用」の要件を満たしていても使用料を請求する講談社だが、自らが加害者になった場面ではまともな対応をとらない。とんだダブル・スタンダードだ。

統一教会関連の記述の大半がコピペ

 問題の記事は、時任氏が執筆し11月12日に『現代ビジネス』に掲載された『菅原一秀・河井克行「スピード辞任」疑惑まみれ人材が出世できたワケ 菅官房長官への忠誠、そして…』。すでに12月18日に訂正されている。訂正前の記事(11月12日時点)は以下の魚拓参照。 同記事1ページ目 同記事2ページ目 同記事3ページ目 同記事4ページ目  このうち2ページ目と3ページ目に計3カ所、時任氏の記事より約2カ月前の9月19日にHBOに掲載された鈴木氏の記事〈統一教会と関係の深い議員が多数入閣。その一人、菅原一秀の経産相抜擢に見る、「菅政権」への布石〉内の文章とほぼ一致する文章が見られた。本記事冒頭の画像が、2つの記事の対応表だ。  1カ所目は、〈菅原〉(鈴木氏)とある部分に時任氏は敬称をつけて〈菅原氏〉や、〈菅官房長官〉を〈菅長官〉としている。2カ所目では、〈教団2世組織・勝共UNITE〉(鈴木氏)を〈教団2世組織「勝共UNITE」〉(時任氏)に改変。3つ目では〈主要メンバーや都内の〉(鈴木氏)が〈主要メンバーや、都内の〉(時任氏)に。  時任氏は、1文につき必ず1カ所もしくは2カ所、ほんの少しだけ改変している。改変部分以外は鈴木氏の文章と一言一句変わらない。  このうち、3ページ目の<「勝共UNITE」が永田町の広陵会館で開催した>という一文にある「広陵会館」は、正しくは「星陵会館」。鈴木氏の誤記がそのまま使われていたことで、鈴木氏は自身の記事が「コピペ」されたことを確信したという。

事実と食い違う時任氏の言い分

 当初、「星陵会館」の部分1カ所の問題にしか気づいていなかった鈴木氏は、11月12日のうちにTwitter上で時任氏にこの点を指摘。すると時任氏は、「すみません。リンクを張り忘れていたようで、いま訂正中とのことです。今後、気を付けます。」(時任氏のTwitterより)と返信した。  現代ビジネス編集部は、記事内に以下のような追記を行なった。 〈(編集部注:上記の情報は鈴木エイト氏「統一教会と関係の深い議員が多数入閣。その一人、菅原一秀の経産相抜擢に見る、『菅政権』への布石」ハーバービジネスオンライン、2019年9月19日を参考にしました/2019年11月12日17時40分追記)〉  「参考」にした結果、元の文章とほぼ一致する内容・文言にしたのであれば、いわゆる「盗用」と呼ばれる行為ではないだろうか。仮にこれが「引用」なのであれば、むしろ原文通り1カ所たりとも改変してはならない。しかし時任氏は上記の通り、3つの文章を各1カ所ずつ改変している。  出典を追記したとしてもなお、これは「引用」ではない。むしろ、「ここから盗用しました」と表明する犯行声明めいた追記になったように見える。  また、現代ビジネス編集部がこの追記を入れた位置も不自然だった。さも武見演説会のくだりだけを参考にしたような位置に置かれていたのである。  しかし鈴木氏は一旦、矛を収める。時任氏に「是非今度、どこかのタイミングで会って情報交換等させていただけるとありがたいです」などと返信。すると、時任氏は「こちらこそ、宜しくお願い致します。同じ対象を問題視しているわけですし。 」(時任氏のTwitterより)と返信した。  記事をコピペしておきながら、単なるリンクの貼り忘れだと言い張り、「同じ対象を問題視」しているのだからよろしくね、という。しかもこの後、鈴木氏はほかにも2カ所、自分の記事内の文章とほぼ一致する箇所があることに気づいた。合計で上記の3カ所である。  これらについて改めて鈴木氏がTwitter上で指摘すると、時任氏は「「令和の会」は、確かに酷似してますが、これは新聞各紙をベースにしています。
そのほかは、過日、申し上げたとおりです。
」(時任氏のTwitterより)と返信した。  盗用ではないかと指摘され「違うよ。あなたの記事ではなく新聞記事を盗用したんだよ」と言い訳しているように見えるが、それはさておき。時任氏のこの説明が指しているのは、この一文だ。 〈今年6月、菅原は菅官房長官をバックアップする10数人の自民党無派閥国会議員の連絡会「令和の会」を立ち上げた。〉(鈴木氏の記事) 〈そして今年6月、菅原氏は菅長官をバックアップする10数人の自民党無派閥国会議員の連絡会「令和の会」を立ち上げた。〉(時任氏の記事)  前述の通り、時任氏の記事は菅原・前経産相の名前に「氏」を付け加え、菅官房長官から「官房」の2文字を取っただけで、それ以外は鈴木氏の文章と完全に一致している。  新聞記事でもGoogleで検索で上の時任氏の文章と完全一致する新聞記事を探してみたが、存在しなかった。〈自民党無派閥国会議員の連絡会「令和の会」〉や〈連絡会「令和の会」〉といったフレーズに区切っても、同じフレーズを含む新聞記事は1つたりとも見つからなかった。一致するのは、鈴木氏の記事だけだ。  そもそも新聞各紙は、この「令和の会」について「連絡会」とは報じていない朝日新聞は〈自民党無派閥の衆参議員13人による「令和の会」〉、毎日新聞は〈菅氏を支える中堅議員を中心に新たなグループ「令和の会」〉、日経新聞は〈菅義偉官房長官に近い自民党の無派閥議員が菅氏を囲む勉強会〉、時事通信は〈菅義偉官房長官を中心とした自民党無派閥議員による新たな勉強会「令和の会」〉と報じている。  日経新聞のように「首相を支える菅氏を支援する無派閥の連絡会で、派閥やグループではない」とする菅原氏のコメントを報じている新聞はある。つまり菅原氏が「連絡会」と言っているだけで、新聞各紙は「グループ」あるいは「勉強会」として扱っているのだ。  「令和の会」を「連絡会」として扱った新聞記事も、1つも存在しない。  「新聞各紙をベースにしています」という時任氏の説明は、事実と食い違っている。時任氏の記事のベースになり得たのは鈴木氏の記事しかない。
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