国会パブリックビューイングでは以上の5つの論点を今年、取り上げてきたが、他にも余力があれば取り上げたかった問題はある。「あいちトリエンナーレ」への補助金の不交付問題や、公立学校教員への1年単位の変形労働時間制の導入の問題などだ。取り上げることはかなわなかったが、関連する記事を2つ、上げておきたい。
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「保守本流を自負 大村知事が語る不自由展・憲法・自民党」(朝日新聞デジタル、2019年12月24日)
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日本労働弁護団「公立学校教員への1年単位の変形労働時間制導入に反対する緊急声明」(2019年11月7日)
統計不正への官邸の関与の疑惑、強行されようとしていた民間英語試験の共通テストへの導入、そして「桜を見る会」への不適切な招待の問題。これらに共通する問題として、政府にとって不都合な事実の記録が非公開にされ、あるいは廃棄されたと主張され、あるいはそもそも記録されなかったために、検証が困難になっているという問題があげられる。
記録がない、もしくは廃棄したとして政府は適切な説明を拒み続け、野党や報道関係者は事実関係を確定させるために膨大な時間と労力を費やすことを余儀なくされる。その状況が、ややもすると、「いつまでもそんなことを繰り返しているよりも、もっと大事な政策課題があるだろう」という冷ややかな目で見られる。
しかし、記録を残さないということが常態化すれば、政府が行政を私物化する事態がますます横行する。専門家の指摘を無視した政策も強行され続ける。記録が残され、検証が可能であり、責任の所在も明確である状態を回復しないと、民主主義が破壊されてしまう。そういう状況では、大事な政策課題に政権が適切に対処することも期待しがたい。今がいかに深刻な状況にあるかは、下記の記事をぜひお読みいただきたい。
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「公文書クライシス 官邸の隠蔽体質 もはや民主主義ではない=大場弘行(特別報道部)」(毎日新聞、2019年12月26日朝刊)
年の瀬が迫る中で、今はカジノをめぐる収賄の問題が表面化してきた。にもかかわらず菅官房長官は12月25日の記者会見でも「できるだけ早期にIRの整備による効果が実現できるよう、着実に進めていきたい」との姿勢を変えていない。
国民の声に耳を貸さず、不都合な事実から目を背け、自分たちの進めたい政策を強行する、その姿勢が様々な問題をめぐって一貫して続いている。その現状に、私たちはあきらめずに向き合い続けなければならない。
<文/上西充子>