国会パブリックビューイングから振り返る今年の国会の論点

菅官房長官記者会見における質問妨害問題

 菅義偉官房長官による記者会見で、東京新聞の望月衣塑子記者への質問妨害が起きている問題を国会パブリックビューイングが取り上げたのは3月26日。この質問妨害に関して、マスコミ関係の労働組合の連合組織MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)が3月14日に「知る権利」を掲げて行った官邸前デモのスピーチ映像を中心に、菅官房長官と望月記者の記者会見でのやりとりや、3月22日の参議院予算委員会における田村智子議員の質疑を組み込んで紹介した。 ◆【街頭上映】菅官房長官記者会見における質問制限・質問妨害問題 (解説:上西充子)(新宿西口地下)(2019年3月26日)  望月記者の質問は後回しにされ、質問を始めると、司会進行を担っている上村秀紀・官邸報道室長が数秒ごとに「簡潔にお願いします」と口をはさんで妨害し、意味をなさない答弁しか得られなくても質問は二問までしか認めずに会見を打ち切ってしまう――そういう状況が続いたのちに、上村室長が「当該記者による度重なる問題行為」について、内閣記者会に対して「問題意識の共有をお願い申し上げる」と求めた申し入れ書を出したのが2018年12月28日。  新聞労連は2月5日に抗議声明を出したが、2月26日の記者会見では、「この会見はいったい何のための場だと思っていらっしゃるのでしょうか」と望月記者が問うたのに対し、菅官房長官は「あなたに答える必要はありません」と言い放った。  そのような異常なやりとりの様子は、現在公開中の森達也監督の映画『i-新聞記者ドキュメント-』にも収められている。  3月14日のMICによる官邸前抗議行動は、この問題を記者の、そして私たちの「知る権利」が脅かされている問題ととらえて行われたものであった。  この抗議行動で神奈川新聞の田崎基記者が「これ、望月衣塑子さん問題じゃないから。これは、権力者が傲慢になっているという問題なんです」と語ったことは重要だ。また、田崎記者はこの抗議行動で、「怒ってる人、手、あげて!」というノリの良い独特なコールを披露した。ぜひ映像でご覧いただきたい(55分過ぎより)。  その後、現在は「桜を見る会」をめぐって、毎日新聞、北海道新聞、朝日新聞などから、踏み込んだ質問を続ける記者が出てきて、菅官房長官が答えに窮する場面が多くなっている。毎日新聞は「桜を見る会」について菅官房長官の記者会見や野党合同ヒアリングの主な一問一答を詳報するなど、追及の姿勢を強めている。

追及するメディアもあれば、政権におもねるメディアも

 しかし、報道各社の姿勢は一様ではない。11月20日には安倍首相が官邸記者クラブの各社キャップとの懇談の場を設け、毎日新聞は社の判断として不参加だったが、他紙は出席し、判断が分かれた。12月17日には報道各社の首相番記者との懇談の場が設けられ、毎日新聞、東京新聞を除く全社が参加したと報じられている。安倍政権が報道への圧力を強めている中で、報道が権力監視の役割を果たしうるか、それとも政権におもねるのかが、問われている。  この問題に対し、新聞労連の南彰委員長の下記の寄稿をぜひ読んでいただきたい。「この懇談は市民とメディアの間をまたもや引き裂いた。市民に信頼される報道を目指して頑張っている記者の心を折れさせていくメディアの上層部の意識って何なんだ」という現場の記者の嘆きが記されている。 ●南彰「会費6千円「桜を見る会前夜祭」より高い首相懇談会の愚 “共犯者”にされたメディアに未来はあるのか?」(AERA dot. 2019年12月23日)  なお、12月24日の菅官房長官記者会見では、質問を続けようとしていた記者がいるにもかかわらず、幹事社の記者が質問を打ち切る場面があったようだ。朝日新聞サンフランシスコ支局長の尾形聡彦氏がツイートで伝えている。  他方で、続く25日の記者会見では、上村官邸報道室長が「次の質問を最後で」と早々に打ち切ろうとしたことに記者側が抗議し、質問が続けられたという。 ●「菅氏会見、桜絡みの質問中に官邸側が終了要請 一時紛糾」(朝日新聞デジタル、2019年12月25日)  記者会見をめぐって、各社の、そして各記者の、安倍政権への姿勢が問われ続けている。
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