国会パブリックビューイングから振り返る今年の国会の論点

国会PV

国会PVはスピーカーと画面が大きなノートPCがあれば一人でもできるとして、草の根で広がりつつある

2019年の国会を、国会PVが取り上げた5つのテーマで振り返る

 国会審議を街頭で解説つきで上映する国会パブリックビューイング。開始は働き方改革関連法案を取り上げた2018年6月15日の新橋SL広場で、これまでに40回の街頭上映を行ったが、先日の12月21日の朝日新聞夕刊1面トップ記事「国会を見る会 街角で」*や、12月25日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」の「ショーアップ」における紹介によって、ようやく認知度が広がってきた。 〈*「国会「迷答弁」路上に笑い声 全国上映、仕掛けたあの人」(朝日新聞デジタル、12月22日)〉  本記事では、国会パブリックビューイングが今年の街頭上映で取り上げた5つのテーマを振り返る。

統計不正問題

 厚生労働省の基幹統計である毎月勤労統計の統計処理に問題があったことが明るみになったのは2018年12月末。不適切な統計処理によって、2017年の値と比較した2018年の賃金の前年同月比の伸び率が、実態とは異なり過大になっていた、というのが主な問題だ。  国会パブリックビューイングでは、1月24日の衆参の厚生労働委員会における閉会中審査の段階から、室内からのライブ配信で2回、街頭上映で4回、この問題を取り上げた。 ◆【ライブ配信】毎月勤労統計不正調査問題(解説:上西充子)(2018年1月26日) 【街頭上映】毎月勤労統計不正調査問題(解説:上西充子・伊藤圭一)(新宿西口地下)(2019年1月28日) 【街頭上映】毎月勤労統計不正調査問題 (解説:上西充子・伊藤圭一)(有楽町駅中央ガード下)(2019年1月29日) 【街頭上映】政府統計不正問題(解説:上西充子・伊藤圭一)(新宿西口地下)(2019年2月6日) 【街頭上映】政府統計不正問題(解説:上西充子・明石順平)(新宿西口地下)(2019年2月16日) 【ライブ配信】毎月勤労統計への政治介入問題(解説:上西充子・伊藤圭一)(2019年3月1日)  2月6日の新宿西口地下における街頭上映では、2月4日の衆議院予算委員会での小川淳也議員の質疑のみを取り上げた。毎月勤労統計の不正の背後に、実質賃金の伸び率を良く見せたいという官邸の意向があったのではないかという論点を、2014年の衆議院予算委員会における前原誠司議員によるアベノミクスの「誤算」の指摘にまでさかのぼって検証して見せたもので、推理ドラマのような迫力のある展開だった。  麻生太郎財務大臣の答弁に次のように即座に切り返した場面では、見ていた人たちから拍手が起きた(映像29分過ぎから)。 小川淳也議員:きわめて政治的な意図が、裏に隠れているんじゃないですか。精度を高めろ、正しい統計を出せと表では言いながら、裏では数字を上げろと、いい数字を出せと、暗に政治的圧力をかけているんじゃありませんか。 麻生太郎財務大臣:あの、役所におられたらおわかりと思いますけれども、圧力をかけたら数字があがるものでしょうか(議場から、嘲けるような笑い声) 小川淳也議員:役所にいたから聞いているんですよ。ちょっと、この政権は、公文書を書き換えさせていますからね。それ、具体的に指示したんですか? 指示していないのに、何でやるんですか、官僚がそんなことを、追い詰められて。そういう政権なんですよ。そういう体質を持った政権なんだ。  小川議員は元は総務省の官僚だったという。官僚が官邸の圧力のもとで忖度を強いられる、そういう状況がこの毎月勤労統計の不正の背後にあったのではないかというのが、この日の小川議員の追及の核心だった。  筆者はこの2月4日の小川淳也議員の質疑も踏まえ、2月26日に衆議院予算委員会中央公聴会の公述人意見陳述でこの統計不正の問題を取り上げた。 ●「統計の信頼性回復のためには、政府と与党はまず「不都合な事実」に向き合え」(上西充子)(ハーバー・ビジネス・オンライン、2019年2月26日)  3月1日には衆議院本会議で小川淳也議員が1時間50分ほどにわたり、根本匠厚生労働大臣に対する不信任決議案の趣旨弁明演説を行った。国会パブリックビューイングでは、この演説の全体を字幕つき映像にとりまとめて公開した。 ◆【字幕つき映像公開】3月1日衆議院本会議 根本厚生労働大臣不信任決議案趣旨弁明 小川淳也議員(立憲民主党・無所属フォーラム)  また筆者は3月4日にこの趣旨弁明演説の内容を下記の通り項目だてをして文字起こししている。 ●【文字起こし】小川淳也議員:根本厚生労働大臣不信任決議案趣旨弁明(2019年3月1日衆議院本会議)  この趣旨弁明演説を3月1日のNHK「ニュースウオッチ9」は、悪意ある切り取り編集でゆがめて報じた。水ばかり飲んでいたずらに時間を浪費しているかのように編集されたニュース映像の問題を、筆者は下記の記事で批判的に分析した。 ●「小川淳也議員による根本大臣不信任決議案趣旨弁明を悪意ある切り取り編集で貶めたNHK」(上西充子)(ハーバー・ビジネス・オンライン、2019年3月6日)  統計不正の問題は、特別監察委員会によるヒアリング調査がお手盛りのものであったことが国会審議で明らかになり追加調査が行われたが、2月27日に出された追加報告書でも官邸の介入疑惑は調査の対象とならず、関係者へのヒアリングも曖昧な点を多く残すものであった。 ◆毎月勤労統計調査等に関する特別監察委員会「毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書」(2019年1月22日)毎月勤労統計調査等に関する特別監察委員会「毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する追加報告書」(2019年2月27日)
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