「事故物件」――。
独り歩きしがちな言葉であるため定義や線引は少々難しい。
広義な意味合いに於いては、事件や事故のみならず、火災や指定暴力団の影響、土壌汚染に大気汚染、騒音、悪臭、心霊、隣人トラブルと様々な要素が含まれるのだが、昨今「事故物件」と直結しているイメージと言えばこれだ。
「
その物件で過去に人が死んでいるか否か」
心理的瑕疵物件との呼び名もある通り、危惧される影響があくまでも“心理的な要因”である点が注目すべきポイント。
今では「事故物件」を専門に扱う不動産業者が登場するほどに話題性バツグンなこの言葉だが、考えようによっては心理的な要因を気にすることさえなければ安く借り、或いは安く購入できる物件であることに変わりはない。
では、事例も多くある転売という方法以外に、この「事故物件」をうまく扱う手法にはどのようなものがあるのだろうか。
イラスト/岩垣たかゆき
23区からは少々離れるが、まだまだアクセスも悪くない東京都内。
築30年越えながらも外壁にはリフォームの痕跡がみられ、手入れもまずまず行き届いている印象だ。
オーナーは50代の自営業男性。
該当の物件は
5LDKで庭付き駐車スペース2台という立派なものだが、今から5年ほど前に
約600万円で購入したという。
安さの秘密はもちろん
事故物件。過去に家族間殺人事件の発生があり買い手がつかずズルズルと値段が下がっていたという寸法だ。
オーナーは当初、趣味で続けている演劇活動用の小道具が収納できるトランクルームをメンバー2人と探していたのだが、物量の多さとトランクルームの割高さに「戸建てを買ってしまった方が安いのでは」というプランを思いついた。
「
自分が住むのでなければ事故物件でもいいか」との発想から思い切ると、仲間内が次々と噂を聞きつけ「自分にもトランクルームとして使わせて欲しい」と参加。
今ではリビングをベニヤ板で区切り自分が使う以外に合計6人へ貸し出しているという。
仲間内のため
1人あたり6畳分ほどのスペースが使えて月々1万5000円という割安貸出。
合計で月々9万円の収入。ローン返済や諸経費を差っ引いても
毎月約5万円の収入がある。この調子で進めばあと5年(計10年)で物件購入費用がペイできるようになるとのことだ。
想定空室率10%、諸経費15%の簡単な利回り計算をしてみると、
実質利回りは驚きの13.5%!
該当の「事故物件トランクルーム利用」事例は、
貸出相手が仲間内という信用から成り立つ案件のため、現在までに窃盗などのトラブルには見舞われていない。
スペースの区切り方や鍵の扱い、料金設定、支払いに関する仕組み、防犯対策といった課題を強化することでアイデアを転用する方法もありそうだ。