イラスト/岩垣たかゆき
道路整備も行き届いていない首都圏近郊の市街化調整区域。
30年は超えているであろう築年数以上に気になるのは、目の前にある水路から沸き立つ湿気。
袋小路の戸建てながらも駐車スペースは何故か4台分も取られている不思議な物件だ。
玄関前には横に広いサイクルガレージが設けられ、大きな看板と催し物案内の掲示板が増設されている。
物件の玄関扉を開けると1階の壁や仕切りが全て取り除かれており、大きな鏡が張り巡らされたダンススタジオへとリフォームされていることがわかる。
2階はどうやら資材置き場として利用されているようだ。
該当の物件オーナーは50代の女性。元バレエダンサー。
物件との出会いは競売で、
孤独死した高齢者の腐乱死体が発見された物件として200万円という格安での落札だった。
ダンススタジオへの改築には約300万円を投じたそうだが、指導手腕の良さと自転車や車での送り迎えが容易である点から人気スタジオとなり、今では合計20人の生徒数を抱えているという。
週2回のレッスンで月謝1万2000円。各回5人でのレッスンが曜日を分けて展開されているという寸法だ。
月謝を単純計算するだけでも月に24万円の収入となる。これであれば物件購入費用及びリフォーム費用の回収も時間の問題といったところ。
「自分で住むわけではない」というだけでなく、スペースとして「一時的に利用するだけ」という用途では子連れ客も心理的瑕疵を気にかけない傾向のようだ。
想定稼働率を80%、諸経費を20%で利回り計算をしてみると、実質利回り34.6%という驚異の数字が……。
自身が住むと考えると抵抗がある人もいるだろうが、このように住居以外に活用すれば、「事故物件」も生き返るのである。
<取材・文/ニポポ>