BBCが「犯罪の温床」とも言われるダークウェブ上にミラーサイトを開設したワケ

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Sumanley xulx via Pixabay

BBC、Tor経由でアクセスできるミラーサイトを開設

 BBC(英国放送協会)が、接続経路を匿名化できる Tor という技術を使い、ミラーサイトを開設して1ヶ月が経った。  ミラーサイトのURLを通常のブラウザ、例えば Google Chromeで開いてみても、「このサイトにアクセスできません」と表示されるだけだ。閲覧するには、Tor に対応したブラウザが必要になる。  日本で Tor を知っている人は、どれぐらいいるだろうか。名前を知っているという人は、インターネットやIT技術に普段から触れている人だろう。使ったことがあるという人は、ネットにそれなりに詳しい人だと思う。常時使っているという人は、表層的なインターネットだけでなく、深層のインターネット(ダークウェブ)にまで潜っている、かなりのヘビーユーザーだ。  普通の人にとって、Tor は日常から遠い存在だ。しかし、国が変われば事情が変わる。Tor を利用したネット情報の閲覧が、国外の事情を知る貴重な手段である人々もいる。Tor とはいったい何なのか。今回の件を入り口として、少し Tor という技術について触れてみよう。

Torとは何か?

 Tor は、The Onion Router の頭文字から来た言葉で「トーア」と読む。この技術は、TCP/IP(インターネットの標準的な通信)の接続経路を匿名化してくれる。つまり、誰がどういった経路で通信しているのかを隠して、インターネットの別の場所にある情報にアクセスできるようになる。  もちろん、技術的に匿名化してくれるからといって、たとえば通信先のネット掲示板に自分の名前を書き込めば、誰が来たのかばれてしまう。あくまで、通信経路が秘匿されるだけで、通信内容が隠されたり、そこでの振る舞いが隠蔽されるわけではない。  Tor が匿名化を実現する技術は、タマネギ(onion)のメタファーで語られる。タマネギは、薄い皮が1枚ずつ被さっている構造をしている。Tor もこの構造に似ており、通信経路を経るごとに、タマネギの皮で覆うように、次々と情報が暗号化されていく。  そして、通信先で得た情報をアクセス元に戻す場合に、タマネギの皮をむくように、1つずつ暗号が解除されていく。最終的に、情報をリクエストした人の手元には、得たい情報が届くという仕掛けになっている。  こうした仕組みを持つことで、Tor では通信元がどこの誰だか分からないまま、情報をバケツリレーのように運ぶことができる。普通のバケツリレーと違うのは、バケツが人の手に渡るたびに、多重に暗号化されていく点だ。
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ダークウェブの「犯罪の温床」以外の可能性
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