11月20日で桂太郎(第11・13・15代内閣総理大臣)を抜き、憲政史上最長の在職日数となった安倍晋三総理。この間、安倍総理は官僚人事を壟断し、自身の手駒として動く忠実な下僕を主要ポストに据え、自身の「身内」に利権を分け与え、嘘を嘘で糊塗し、法や民主主義を踏みにじり、公文書を捏造させ、国家を私物化してきた。
安倍総理は「政治は結果」というが、その結果は、粉飾だらけのアベノミクス、失敗だらけでカネをばらまく外交とろくな成果も見られない。
『
月刊日本 12月号』では、総特集として、長期政権の驕りと緩みが噴出しまくっている安倍政権を批判する「国家を私物化する安倍晋三 国民を裏切り続けた七年間」を掲載している。
今回はその特集からもともと改憲論者でありながら、安倍政権の改憲スタンスに一貫して異議を唱えてきた慶應義塾大学名誉教授で法学者の小林節氏の論考を転載、紹介したい。
── 憲法改正に向けた安倍政権の動きが活発になっています。
小林節氏(以下、小林): 安倍総理は、憲法9条の1項、2項をそのままにして、憲法に自衛隊を明記するだけだと説明していますが、実は重大なことが隠されています。
昨年3月の自民党大会で決定された改憲の「条文イメージ(たたき台素案)」には、
9条の2を加え、「
前条の規定は必要な自衛の措置をとることを妨げず」と書かれているのです。
これまでの政府解釈、国会答弁は「
必要・最小限の自衛」でした。安倍政権の改憲案は、この「最小限」という考え方を否定しようとしているのです。つまり、
必要な自衛の措置ならば、何でもできるということです。極端に言えば、自衛隊は地球の裏側にも行けるということです。
9条の1項、2項が残るから大丈夫だと考えてはいけません。同レベルの法では新しい条文が優先されます。
9条の2を入れることで、現行の1項、2項は排除されるのです。自民党は、単なるたたき台だと言っていますが、党大会で憲法改正推進本部長に一任され、総務会でも追認された文書です。それは党議決定なのです。
また、安倍総理は自衛隊を明記することによって、自衛隊に誇りを持たせると述べていますが、自衛隊を条文に書き込むこと自体が憲法になじみません。
憲法に明記されている国家機関は、国会(衆議院・参議院)、内閣、最高裁判所、会計検査院だけです。それ以外の国家機関は法律によって規定されています。
自衛隊を管理する防衛省も明記されていないのに、自衛隊だけを明記するのは不合理です。
── 改憲4項目には緊急事態条項も入っています。
小林:非常時には首相に、行政権に加えて立法権、財政権、自治体への命令権を与え、国民には命令に従う義務を課すものです。
実際の災害時に必要のない異常な首相独裁体制です。