萩生田文科相下で進む認可手続き。審議会へ諮問された「幸福の科学大学」とは?

私塾というより宗教施設

 無認可のHSUは「私塾」などと呼ばれたが、実質的には信者養成のための宗教施設。幸福の科学自身、HSUを「幸福の科学が運営する高等宗教研究機関」(教団公式サイト)と呼んだ。  「学部」は3つ。文系の人間幸福学部、経営成功学部、理系の未来産業学部だ。後に芸能人やクリエイター養成を謳う未来創造学部が追加され、東京・江東区に東京キャンパスが設置された。  「開学」初年度は、1学年240人の定員のところ260人が「入学」。大半が信者であり、信者を親に持つ「2世信者」だと思われる。HSUは大学でも各種学校でもないので、入学しようが卒業しようが学歴にはならない。  無認可の施設や団体が「学校」や「大学」を名乗ることは、学校教育法によって禁じられている。しかし「ユニバーシティ」を名乗ることについて規定がないというのが、文科省の見解だった。  施設名以外についても英語名称が用いられる。たとえば学長に相当する者は「プリンシパル」、学部長は「ディーン」、教授は「プロフェッサー」といった調子だ。海外から見たら立派に「ニセ大学」「ニセ教授」だろうが。

県内偏差値70弱なのに卒業生の8割が「ニート」になる高校が出現

 大学開設を計画している学校法人幸福の科学学園は2010年に栃木県に幸福の科学学園那須校(中学・高校)を、2013年に滋賀県に同関西校(中学・高校)を開校させていた。
幸福の科学学園那須校(藤倉善郎撮影)

幸福の科学学園那須校(藤倉善郎撮影)

 HSUが「開学」した2015年は、このうち那須校の3期生が卒業した年にあたる。同年3月にHSUのピラミッド型礼拝堂の落慶式で、当時の学園理事長・木村智重氏が挨拶に立った。前回申請時に文科省職員に対して脅すような発言をしたとされている人物だ(前回の記事参照)。 「実は昨日、幸福の科学学園那須本校にて、第3期生の卒業式がございました。ちょうど100名の卒業生が輩出したわけでありますが、そのうちの約8割、80名近い彼らが、このHSUに進学してまいります」(木村氏) 「国公立(大学)の発表はまだなんですが、早稲田・慶応、早慶には、去年の合格実績である29名を上回る、昨日時点で30名もの早稲田、慶応の合格生が輩出しております。その彼らのほとんどが、早稲田、慶応に行かず、この主が作られた、神の力がはたらくHSUに進学してくる予定です」  「主」「神」とは、幸福の科学において地球至高神エル・カンターレであるとされる大川隆法総裁のことだ。  幸福の科学学園高校の卒業生100人のうち8割が、HSUに「入学」早稲田・慶応大学に合格した30人も含めて約80人もの若い信者たちが、HSUに行くために進学も就職も放棄してしまったのである。  文科省では全国の学校の統計をまとめる「学校基本調査」を毎年行っている。同省の担当者に確認したところ、このようなケースは「進学準備」にも「就職準備」にもあたらず「その他」に分類されるという。それではニートではないですかと尋ねると…… 「ニートというのは経済産業省のほうで使っている言葉で、そういう判断はこちら(文科省)では行っていませんので……」(文科省の担当者)  HSU「開学」前年の学校基本調査では、全国の高卒者の進路のうち「進学も就職もしていない者」は4.5%、「その他」6.1%。これがHSU開設年の幸福の科学学園ではなんと8割。県内偏差値70弱を誇る学園なのに、進学率は20%以下だ。
幸福の科学学園那須校の食堂で食事をする生徒たち(藤倉善郎撮影)

幸福の科学学園那須校の食堂で食事をする生徒たち(藤倉善郎撮影)

 この傾向は現在まで変わらない。栃木県発表の学校基本調査2019年度分でも、幸福の科学学園では卒業生98人の大学進学率はたった11.2%しかない。「専修学校等への進学者」も同数、「就職」は1人(1.0%)。76.5%にあたる75人が「左記以外の者」となっている。  学園卒業生の証言によれば、HSU開学時にすでに学園を卒業し一般の大学に入学していた信者の中にも、中退してHSUに入った者が少なくないという。  無認可のままHSUが開設されたことで、統計上「ニート」と変わらない若者を大量に輩出する高校が出現してしまった。不登校でも引きこもりでも病気療養中でもない。一般の有名私立大学に合格済みの人も含む、通常ならニートになりようがない若者たちだ。  HSU開設前に学園を卒業した別の元学園生は、こう語る。 「私も親や教団職員たちからHSUに入るように勧められました。職員たちは、露骨な強制はしないんです。いくら嫌だと言っても、面接のように大人たちが私の前に並んで座って、『どうしてそんなに嫌なの?』と、優しい口調で何時間も圧をかけてくる。家に帰ると、親がなぜHSUに入らないのかとなじる」  以前、〈終わりなきカルト2世問題の連鎖<短期集中連載・幸福の科学という「家庭ディストピア」1>〉で紹介した元2世信者の言葉だ。この2世は最後までHSUへの「入学」を拒んだ。現在は信仰を失っており教団から距離を置いている。
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大学の前にまず学校法人の問題
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