「反抗することは若者の特権」という、この当時までのロックにでさえ当てはめられていた固定概念を完全に覆したことで、ニール・ヤング(Niel Young)の本作はかけがえのない意味がある。すでに40代半ばにさしかかっていた“ヤッピーになれなかったヒッピー”は、ここで自分を奮い立たせるように、これまで以上の激烈なエモーションと共に、「自由な世の中でロックし続けろ」と、「人生の終わりなき戦い」を主張。この「Rocking In The Free World」はその後、パール・ジャムを始め、多くのロッカーに歌い継がれるアンセムとなった。
この曲をはじめとし、本作では彼本来の、社会の現実を直視し、その矛盾への怒りや嘆きを訴えたスタイルへと回帰。かつて「錆び付く前に燃え尽きたい」とも歌った彼だったが、その感性はまだ錆び付いてさえもいなかったことを証明し、70歳を超えた現在に至っている。
<取材・文/沢田太陽>