JR西日本、終電繰り上げ方針。追従する事業者や少ないものの、日本で終夜運転が難しい理由とは?
先月24日、JR西日本が明らかにした近畿エリア在来線の“終電繰り上げ”方針が話題になっている。新聞報道などによれば、2021年春のダイヤ改正を目標に京阪神エリアにおける終電の時刻を30分ほど早める方向だというのだ。
これを受けて、飲食店などからは売り上げにマイナスの影響が出そうだという声が上がる一方で、「仕事を早く切り上げやすくなる」と歓迎する会社員の声なども報じられていた。この終電繰り上げの目的はどこにあるのか。鉄道ライターの境正雄氏は次のように語る。
「JR西日本の発表によると、深夜帯に行われている保守作業の作業員確保という目的が大きいようです。線路や架線の保守は鉄道の安全運行には欠かせない作業ですが、運転本数の多い都市部では日中の保守作業は難しい。そこで夜間、終電から始発までの3〜4時間程度を使って行われています。当然、楽な仕事ではなく、作業員の確保が厳しくなりつつあるようです」
実際、JR西日本の発表ではここ10年で線路保守の作業員が20%以上減っているという。終電を繰り上げることによってこの保線作業に使える時間を増やし、結果として休日を増やすことで作業員の労働環境を改善、人員確保につなげたいというわけだ。
「夜間の保守作業は終電後すぐ取り掛かれるわけではなく、列車の運行が完全になく安全が確保されたことが確認されなければ始められません。同様に始発直前まで作業ができるわけでもないので、実際の作業時間は2〜3時間程度といいます。終電から始発までの時間が増えれば作業にもゆとりがでて、安全性にも寄与するのではないでしょうか」
さらに近年の“働き方改革”の成果なのか、深夜0時以降の利用者数が大きく減少しているという。そうした事情も考えれば、終電時刻を繰り上げるというJR西日本の方針も無理はないと思える。ただ、現状ではJR西日本以外の事業者に追随する動きは見られない。
「国内の鉄道の終電時刻は首都圏や京阪神などの都市部で深夜1時前後、地方では23〜24時となっています。またJRと比べると私鉄の終電は早い傾向にあり、時間にすると30分ほどは早く設定されているケースが多いですね。ですから、今回のJR西日本の終電繰り上げは結果として私鉄各線と同じくらいの終電時刻になると考えられます」
背景には保守作業員不足が
深夜0時以降の利用者は減少中
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