カジノ誘致を巡る「利権」という幻想。甘い汁を吸えるのは誰なのか?

カジノなしでも訪日外国人が増える中、効果はありや?

 話を戻すと、カジノはパチンコと同じで運営会社の儲け=客の損失であり、運営会社は顧客の損益(すなわち自分の損益)を自由に調節することができる。つまり、客が日本人なら、日本人トータルの損益がプラスになることは「絶対に」ない。  トランプが大統領選に当選した2016年11月8日からわずか9日後の11月17日、安倍晋三首相は当選したばかりのトランプをNYの自宅(トランプタワー)に訪問している。しかし、安倍首相は(官邸も外務省も)次期大統領はヒラリーと「決め打ち」していたため、トランプとのルートがまったくなかった。両者を繋いだのは、トランプの大スポンサーであるカジノ王のシェルドン・アゼルソン。このとき、安倍首相は「日本も間もなくカジノを法制化(合法化)する」と口をすべらせてしまったはずである。  帰国した安倍首相は早速3年以上もホコリをかぶったままになっていた「統合型リゾート(IR)整備推進法案」を引っ張り出し、会期末の12月14日までに衆参両院で決議するように厳命。衆参両院ともわずか数時間の審議で強引に成立させてしまった。かくして日本でもカジノが法制化(合法化)されてしまったわけである。  当初のIR推進の目的は、「外国人観光客の誘致」だったに違いない。カジノ構想が出てきた2000年代の訪日外国人観光客は年間5~600万人であり、カジノは外国人観光客誘致の1つの目玉となっていたかもしれない。  ところが日本を訪れる外国人観光客は2013年に1000万人を超え、2018年には3100万人にもなり、今後さらに増えそうな勢いである。その日本を訪れる目的は多様化。日本は「親切で安全で文化的な国」との評価が固まりつつある。そこで「カジノができましたよ」と言ったところで、どれだけの効果があるのか?  次回は、日本のカジノ運営をどこが握るのかについて考えたい。 <文/闇株新聞>
‘10年創刊。大手証券でトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった後、独立。証券時代の経験を生かして記事を執筆し、金融関係者・経済記者などから注目を集めることに。2018年7月に休刊するが、今年7月に突如復刊(「闇株新聞」)。有料メルマガ配信のほか、日々、新たな視点で記事を配信し続けている。現在、オリンパス事件や東芝の不正会計事件、日産ゴーン・ショックなどの経済事件の裏側を描いた新著を執筆中
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