カジノ誘致を巡る「利権」という幻想。甘い汁を吸えるのは誰なのか?

2000年代から加速した議員とカジノの関係

 しかし、石原都知事のカジノ構想で、カジノ=利権と安直に結びつける国会議員が続出し、2002年12月には早くも「カジノと国際観光産業を考える議員連盟(野田聖子会長)」が超党派で発足している。この議員連盟には「我も我も」と多数の議員の参加希望があり、その後も同じような議連には必ず参加者が200人近くひしめく状態が続く。  そして2006年1月には自民党政務調査会・観光特別委員会に「カジノ・エンターテインメント検討小委員会(岩屋毅委員長)」が発足し、自民党内で正式に議論が始まる。またこの頃から、海外のカジノ運営会社がいろんなツテを頼って委員会に接近し、勉強会だけでなく海外カジノ視察と称してアゴアシ付きの海外旅行に委員会メンバーを頻繁に「ご招待」するようになった。当時よく名前を聞いたカジノ運営会社はMGMとWynn(ウィン)である。MGMはセガサミーと、Wynnはアルゼ(現ユニバーサルエンターテインメント)と、親密だったからである。  2009年8月に民主党に政権が移ってもこの流れは止まらない。2010年4月にはこれも超党派で「国際観光産業振興議員連盟(IR連盟=古賀一成会長)」が発足し、この頃からカジノ法制化(合法化)の動きが出始める。当時の与党・民主党のほうが積極的で、複数のワーキンググループを立ち上げてIR推進法案の準備を進めるも、2012年12月の総選挙で下野して頓挫してしまう。  政権交代を受けて自民党IR議連を改組し、細田博之・元内閣官房長官が会長に就任。2013年6月に日本維新の会が単独でIR推進法案を衆議院に提出すると、自民党と生活の党が相乗りするかたちで「カジノを中心とした統合型リゾート(IR)を推進する法案」として同年12月に衆議院に議員立法で提出する。しかし、ろくに議論されないうちに、2014年12月の衆議院解散で廃案となる。  2015年4月に再び「統合型リゾート(IR)整備推進法案」として自民党、日本維新の会などが衆議院に議員立法で提出するも、自民党の連立相手である公明党が積極的でないなどの理由で審議されることはなかった。

工事需要はあれどその後の損益は誰も考えていない愚

 法案はあくまでも統合型リゾートの一環としてカジノを全国に何か所か解禁するという建て付けであるが、日本の各議員や主要企業などはすべて「とにかく何でも大掛かりなハコモノ(統合型リゾート施設)を建てて、そこでカジノを開設させしてしまえば明日からでも外国人を含む観光客が押し寄せてカネを落としてくれる」と非常に楽観的に考えていた。  そしてこの認識は現在でもほとんど変わっていない。だから、カジノを含む統合型リゾート(IR)を誘致すること自体が「利権」だと考えられているわけである。確かに公共事業と同じで一度は工事需要があるため、「利権」ではある。だが、その後の損益計算などは誰も考えていない
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「甘い汁」はすべて海外のカジノ運営会社のもの
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