「身の丈」発言だけじゃない。萩生田文科相と認可再申請中の「幸福の科学大学」の危うい関係

「ゴールデンエイジ」に向けたスケジュールが破綻

 大川総裁は2020年に日本は黄金期を迎えると予言している。これを「ゴールデンエイジ」と呼び、その担い手として若い信者を養成するために教団が取り組んできたのが幸福の科学学園や幸福の科学大学といった教育事業だ。ゴールデンエイジとは事実上、地球至高神エル・カンターレである大川総裁を頂点とした教勢の拡大を意味している。その中で幸福の科学大学は、幸福の科学が育成した人材を世に送り出す、「エル・カンターレ文明」の発信基地と位置づけられていた。当初2015年の開学を目指しており、「ゴールデンエイジ」が実現する2020年に一期生が卒業し社会に羽ばたくはずだった。  国会議員を利用し文科省職員を脅してまで認可にこぎつけようとした必死さは、こうした宗教的な背景も関係しているのだろう。  しかし不認可に。そして5年間認可しないとのペナルティが加わったことで、「ゴールデンエイジ」が始まる年に幸福の科学大学の一期生を世に送り出す「神の計画」は絶望的となった。  長くなったが、前回の同大学の設置申請がいかに無茶苦茶なものだったか、おわかりいただけただろうか。この大学申請劇の中で、幸福の科学側に立って「仲介役」として立ち回ったのが、当時は閣僚でも何でもない衆院議員だった萩生田光一・現文科相である。

学長の「名義貸し」まで教団に指南した萩生田文科相

萩生田光一文科相。11月6日衆院予算委員会(衆院インターネット中継より)

萩生田光一文科相。11月6日衆院予算委員会(衆院インターネット中継より)

 萩生田氏の関わりも、前述の経緯の中で教団が自ら「幸福の科学大学(仮称)」のウェブサイト上で公表した。この点についても、教団側は問題のある内容だという認識がなかったのだろう。 〈6月10日の面談において、今泉前室長(文科省大学設置室長=当時)は、自由民主党総裁特別補佐である萩生田光一衆議院議員の仲介による調整によって、「幸福の科学大学」の学長候補者を九鬼副理事長から別の人物に替えて、九鬼副理事長は「総長」として置くこととすれば、細かい問題はあっても工夫によって大学設置認可が可能であるとの趣旨の発言をしていた。〉(同年11月26日付「文部科学大臣の不正行為に関する弁明請求書」)  同大学は学長を九鬼一氏に予定し申請していた。HSUウェブサイトにあるプロフィールによると、九鬼氏は大学卒業後に大手石油会社に入社後、1993年に幸福の科学に「奉職」とある。幸福の科学の職員(出家者)となったという意味だ。その後、教団の研修指導局長や幸福の科学出版社長を歴任し、2012年から学校法人幸福の科学学園理事長。大学申請時には副理事長(大学設置構想担当)だった。  多少の一般社会人経験はあるにしても、大学運営や大学での教育・研究に関わった経験はない。審議会側は、この九鬼氏を学長とする同大学の計画に是正を求めていたと思われる。この点について、萩生田氏が行ったとされる助言を、幸福の科学はこう説明している。 〈それと同様の発言として、5月27日に行った大学関係者と萩生田議員との話し合いの中でも、「(学長を変えるというのは)九鬼さんの人格を否定しているわけでなく、正直言って、今後しばらく我慢したほうが得なんじゃないかと。これはもう、役所がそういうアドバイスしたってことになると大変なんだけど、今までの例を見ても、やっぱりそこは経験のある、正直言うと名前だけ借りてスタートして、それで一年間のうちに、九鬼さんが副学長とか、そういう経験を積んで、その間に一つ論文でも出しておけば、2年目からは堂々と学長やれるから、そこではもう、介入できないから。」と、萩生田議員からも学長を変えれば開設できるという旨のアドバイスがあった。〉(同)  ごまかして申請を通すための、事実上の名義貸し指南である。  大川総裁が審議会の是正意見に反発して下村文科相の霊言を公表した際には、書籍発刊直前に下村氏自身が幸福の科学関係者に電話をしてきたという。 〈「本をストップすることで、やりようはまだある。まだ、間に合うから。役人がコピーを持ってきた。それを見て驚いた。罵詈雑言が書いてあるではないか。これまで、萩生田から電話があって、一生懸命やっているとは聞いていた。学部名はクリアして、あとは九鬼という人が学長でなければならないというところを、一年我慢してバトンタッチするやり方はあると提案していたが、…とにかく、誹謗中傷の内容である。今だったら、対応の仕方がある。本部のしかるべき人に話をしてくれないか。本(霊言書籍)のストップ(出版中止)は当然のことだ。(中略)今だったら対応の仕方がある。」〉(同)  下村氏のこの電話の内容が事実なら、萩生田氏は下村文科相にも進捗を報告し、下村文科相自身も幸福の科学側と交渉していたことになる。  申し訳ないことに、萩生田氏がなぜ幸福の科学のために奔走したのかはわからない。もともと幸福の科学と付き合いがあったことがうかがえるのは、下村氏の方だ。  幸福の科学側は一連の下村霊言の中で、下村氏が都議時代に幸福の科学に入信していたと公言している。「霊」の言葉ではない。霊にインタビューしていた教団職員の言葉として記録されている。  しかし下村氏がことさらに幸福の科学に入れ込んでいる印象もない。もともと複数の宗教、スピリチュアル関係者、ニセ科学関係者との付き合いが指摘され、文科省時代には「文部疑似科学大臣」などと揶揄された下村氏だ。付き合いのある宗教団体の一つとして幸福の科学の行事に参加した際に、入信したことにされてしまっていただけという可能性も考えられる。  その下村氏について幸福の科学は、前述の通り激しく非難した。大学を不認可にされた直後、2014年11月に行われた衆院選では、幸福実現党が下村文科相の選挙区である東京11区に「下村めい」という同姓候補者を「刺客」として送り込んだ。もちろん落選したが、ここまでやってしまった以上、すでに幸福の科学と下村氏との”友好関係”はぶち壊しだろう。  しかし前回の申請時に仲介役として立ち回ってくれた萩生田氏については、幸福の科学は非難していないし「霊言攻撃」もしていない。萩生田氏がからんだ前回の申請の経緯を記載した書面は、萩生田氏が文科相に就任後に全てウェブサイト上から削除された。伝聞ではあるが、信者たちの間では大学の認可に向けて萩生田氏に期待する声があるとも聞く。
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HSUはどんな「教育」をしてるのか? 不可を受けて改善されたのか?
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