「身の丈」発言だけじゃない。萩生田文科相と認可再申請中の「幸福の科学大学」の危うい関係

「不可」答申の半年前から教団は”戦闘モード”に

 同大学は、ただ不認可になっただけではない。以降5年間は認可しないとするペナルティも付け加えられた。  審議会は「不可」の答申を行う半年ほど前、幸福の科学学園側に「是正意見」を出している。40カ所に及んだ是正意見のうち、特に以下の3点が教団の逆鱗に触れた。 (1) 学部名に前例がない (2) 大学で幸福の科学の教義を教えることに疑義がある (3) 教団職員を長く務めてきた人物は学長として認められない  同年6月に大川総裁は下村博文文科相(当時)の守護霊を呼び出したと称する「霊言」を収録し、書籍『文部科学大臣・下村博文守護霊インタビュー』として発刊した。8月にも第2弾として『文部科学大臣・下村博文守護霊インタビュー(2) 大学設置・学校法人審議会の是非を問う』を発刊した。  信者向けの映像メッセージとして、教団幹部がこう言い放つ場面もあった。 「私たちは、この修正は到底受け入れられないものとして、信仰をかけて闘う予定」  1冊目の霊言本には下村氏のほか、崇教真光という別の宗教団体の教祖・岡田光玉(故人)の霊を呼び出したと称する内容も収録されていた。内容を総合すると、「邪教」である崇教真光の教祖が下村氏を操って、幸福の科学の妨害をしているかのように印象づける内容だった。しかも、この書籍を教団側は審議会関係者たちに送りつけた。  審議会は同年10月に同大学を「不可」とする答申。その際、別途〈幸福の科学大学(仮称)の審査過程における申請者の不適切な行為について(報告)〉を行い、文科省はこれも同時に公表した。そこには、幸福の科学による霊言本発刊や審議会関係者への送付について、こう書かれている。 〈通常の審査プロセスを無視して、認可の強要を意図すると思われるような不適切な行為が行われたことは、極めて遺憾である。本審議会としては、学校法人幸福の科学学園による上記の行為は、大学設置認可制度の根幹を揺るがすおそれのある問題であると考えており、大学設置認可に係る公正な審査を期すためにも、文部科学大臣に上記事項を報告するものである。

「脅すような言動」にも反省なし

 この時点で、文科省の担当者は私の取材にこう説明した。 「彼ら(幸福の科学)は、文科省の職員に対して、認可を求めて脅すような言動もとっていました。こうしたことから、大臣による不認可決定の際には、同学校法人が大学の設置認可を再申請しても最長で5年間は認可しないとするペナルティの対象とすることも決定される見通しです。その期間が何年になるのかは、学校法人側への聞き取りなどを行いながら、追って決定します」  文科省は「脅すような言動」の具体的な内容は明かさなかった。ところが、幸福の科学自身がこれを公表した。  幸福の科学側は審議会の答申やこの報告に反発し、文科大臣だけではなく審議会関係者の守護霊まで呼び出し(たと称して)、文科省側をなじる霊言を連発。私が把握できただけでも、下村大臣(当時)の霊言は審議会による是正意見がなされてから同年10月末までに少なくとも8回も収録されている。また幸福の科学は不認可となった後、文科省に対して異議申し立て等の文書も繰り返し送付。「幸福の科学大学(仮称)」のウェブサイトに逐一掲載した(現在は全て削除)。その中に、文科省側の言い分を引用する形で、「脅すような言動」にかんする説明が含まれていた。 〈本件処分においては、「8月13日(水)及び8月20日(水)の申請者側からの事務相談において、申請者(学校法人理事長)から文部科学省担当者に対して、「宗教法人の連中は過激な奴が多く、それを私が抑えている。」といった趣旨の発言があった」、この行為は、「直接的な物理的危害を連想させるような発言」で、「設置の可否の判断にあたって心的圧力をかける意図があるものと認められる」などとされている。〉(同年12月9日付『下村博文文部科学大臣の処分の不正を明らかにする弁明書』)  ここから、文科省側が学校法人理事長(当時は木村智重氏)による「宗教法人の連中は過激な奴が多く、それを私が抑えている」といった趣旨の発言を問題視していたことがわかる。幸福の科学側は同じ文書の中で、文科省が指摘するような発言はなかったと主張しているが、その内容はこうだ。 〈本学園が保有している詳細な記録によれば、理事長のここでの発言は、「幸福の科学教学」は、宗教法人にとって最も大切な部分であるから、文部科学省が従前認められるような発言をしていたにもかかわらず、認められないのであれば、宗教法人は納得しない、宗教法人にはデモ行進などを行いたいと考えている人も一部いるという趣旨のやり取りにすぎない。  客観的事実として、理事長が、「宗教法人の連中は過激な奴が多く、それを私が抑えている」などとは述べておらず、事実としてもまったくねじ曲げられている。  さらに、その言い方も、冗談交じりの極めて穏当な調子の表現にすぎないものだったのである。〉(同)  木村理事長の発言内容については、双方の主張が食い違っている。しかしどのみち、教団側が文科省職員を脅したことに変わりがないように見える。デモをするのは自由だろうが、事前にデモを予告することによって文科省側の対応を変えさせようとするのは、審議会が報告書で書いた通り「通常の審査プロセスを無視して、認可の強要を意図すると思われるような不適切な行為」と言われても仕方ないだろう。  第三者からは問題行為にしか見えない内容だが、教団側は自ら堂々と発表し正当性を主張している。これを問題のある行為だとは全く認識できていないようだ。むしろ自分たちが何も間違っていないことを示す根拠だと信じ込んでいることが見て取れる。当然、反省もしていない。  後に、下村文科相による「不認可」決定がなされ、以降認可しないペナルティの期間は最長の「5年間」と確定された。当たり前だ。
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幸福の科学側に立ってアドバイスをしていた萩生田文科相
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