団塊世代の夢破れしあと。学生運動や広がる格差が音楽にも影響<戦うアルバム40選 パンクス台頭の’70年代編>

 ポップ・ミュージック史において、社会の不公正や時代の動乱と向かい合った社会的メッセージで時代に一石を投じたアルバムを紹介する「戦うアルバム」。2回目の今回のテーマは‘70年代。反抗の担い手がヒッピーからパンクスに代わる時代を代表する10枚を集めた。

挫折したヒッピー=ベイビーブーマー/団塊世代

戦うアルバムイメージ

photo via Pexels

 『DejaVu』Crosby, Stills, Nash & Young(1970) 『DejaVu』Crosby, Stills, Nash & Young(1970)  アメリカのベイビーブーマーで、日本でも団塊の世代にとって思い入れの深い「戦うアルバム」がこのCrosby, Stills, Nash & Young(CSNY)のセカンド・アルバムだ。愛と平和の祭典を歌った「ウッドストック」、ヒッピーの反抗のシンボルを歌った「カット・マイ・ヘア」という、世に逆らう若者たちの心情を歌いながら、同時に「ティーチ・ユア・チルドレン」「僕達の家」といった、戦いの挫折の後のヒッピーたちの姿を予見するようなナンバーもすでに同居。  本作には激動の時代の推移に揺れ動いていた若者たちの本音が込められている。また、アルバム未収録ではあるが、ほぼ同じ頃にリリースされた、学生運動の闘士4人が射殺された事件に激しく抗議した、ニール・ヤング作の「オハイオ」も合わせて聞いておきたい一曲だ。  『Imagine』John Lennon(1971) 『Imagine』John Lennon(1971)  今や音楽ファンだけでなく、人類平和のアンセムとしてあまりに有名なタイトル曲を含むジョン・レノンの名作。ビートルズ解散直前から本作の少し後くらいまでのジョンの曲は、社会の現実に真摯に向かいあい、自分だけが夢見ているのでは決してない理想を高らかに歌ったものが多い。  ここでは他にも、ストレートに戦争への恐れを歌った「兵隊にはなりたくない」や人と人との対立の疲弊を綴った「真実が欲しい」なども平和を切実に訴えた代表曲として有名。  ただ、その一方で、ビートルズの元相棒ポール・マッカートニーを「クリップルド・インサイド」「ハウ・ドゥ・ユー・スリープ?」で痛烈に批判する一幕も。決して“聖人”にはなりきれない、その人間臭さも含め、魅力的でもある。

武闘派左派を描き発禁に

 『What’s Going On』Marvin Gaye(1971) 『What’s Going On』Marvin Gaye(1971)  “ブラック・イズ・ビューティフル”の時代のソウル・ミュージックがサウンド、言葉共に頂点に達したのが本作。‘60年代はもっぱらモータウンの実力派シンガーのイメージだったマーヴィン・ゲイがいざ本当に作りたかったアルバムを作り始めると、それはゴスペルとジャズとクラシックを織り交ぜた壮麗なサウンド・スケープとなった。  ベトナム戦争(表題曲)や環境問題(「マーシー・マーシー・ミー」)、黒人に過酷な格差社会(「イナー・シティ・ブルース」)など、世の諸々の問題に多角的にメスを入れたジャーナリスティックなアートだ。  彼本人はその後、政治についてのアルバムの制作失敗後に聖愛(性愛でもある)路線に華麗に転じたが、本作の遺伝子はモータウンの後輩スティーヴィー・ワンダーに継承されることになる。  『頭脳警察1(ファースト)』頭脳警察(1972) 『頭脳警察1(ファースト)』頭脳警察(1972)  「日本が生んだ戦うアルバム」としてパッと名が上がる作品は決して多くはないが、この頭脳警察のデビュー作を忘れるわけにはいかない。「戦争で兵士を殺すなら、こっちも政治家を殺し、警視庁を爆破する」と歌った、おそらく日本ロック史上最も過激な歌詞の「世界革命宣言」をはじめとした、当時の武闘派左派のリアリティを伝える楽曲の数々は発売禁止に。  その後、1975年の解散時に600枚のみがプレスされただけでお蔵入りとなったことで、20年以上にわたり、中古レコード市場で数10万円の高額で取引される伝説の名盤として有名となった末、2001年にようやく正式な発売が認められた、という武勇伝を生んだ。  時代の持つリアリティこそ異なるが、「違和感を抱き、立ち上がる」ことが忘れられがちな世に疑問を抱く人にはいまだに響く何かがここにはある。
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ソウル・ミュージックがレゲエに発展
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