「ひどいことが起きていることを知らせてほしい」。入管被収容者から届いた血染めのTシャツ

入管に収容されたクルド人難民申請者から、血染めのTシャツが送られてきた

デニズさんが筆者に送ってきた血染めのTシャツ

デニズさんが筆者に送ってきた血染めのTシャツ

 10月7日、筆者の自宅に血染めのTシャツが届いた。  送り主は、法務省の出入国在留管理庁の収容施設「東日本入国管理センター」(茨城県牛久市。以下、牛久入管)に収容されているトルコ国籍のクルド人のデニズさん(40歳)だ。  なぜ、そんなものが届いたのか。話は5月にさかのぼる。  牛久入管は、在留資格のない外国人を「いずれは母国に送還する」ことを前提に収容している施設だ。その収容人数、今年6月末時点で316人。その3分の2ほどが、本国での迫害を逃れて来日し、難民認定申請をした人たちだ。  ここで5月から、仮放免(一時的に収容を解く措置)を求めてのハンガーストライキを始めたのがイラン人のシャーラムさんだ。彼はここにもう2年以上も収容されている。いつ出られるのかの説明がまったくない生活に「ある日突然頭にきて」ハンストを始めた。

仮放免申請「不許可」の決定通知書に書かれた「理由なし」

東日本入国管理センター

牛久市にある「東日本入国管理センター」。今年5月に始まったハンストは10月も続いている

 刑務所ならば、罪に応じていつ出所できるかわかる。だが入管の収容所では、難民認定申請をした人たちが「在留資格がない」との理由だけで外出も許されず、6畳に5人が押し込まれている。  家族との面会ですらアクリル板越しに30分だけという劣悪な生活を2年も3年も強いられているのだ。もちろん、被収容者は仮放免を求めて申請書を書くが、その返事が来るのはだいたい3か月後。ほとんどの人が不許可となる。  その決定通知書にはこう書かれているだけだ。 「理由なし」  被収容者は、なぜ自分の仮放免申請が不許可なのかを一切知ることができない。さらにここ2~3年の間、仮放免を許可される被収容者が激減し、長期収容が常態化している。  2019年6月末で、牛久入管の被収容者316人のうち、1年以上の長期被収容者が約9割の279人。長い人で5年以上も収容されている。この数字は、2013年2月時点の97人から3倍弱も増えている。  なぜこんなに激増したかというと、2018年2月28日に、入国管理局長が全国の収用所長に「収容に耐え難い傷病者でない限り、収容を継続しろ」との指示を出しているからだ。
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終わりなく収容への絶望から自殺を図る
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