立花氏は動画(2019/09/26)の中で、「現在の日本は、お金持ちがずば抜けてお金をもらう一方で、貧乏人がめちゃくちゃ増えている」と発言し、「政治家やNHK職員などの既得権益層が不正をしているから貧困層の中で政治不信が起きている」と解説している。
そしてそれらへ対する対策として、「年収10億や100億もらっているIT金持ちなどに政治の世界におりてきてほしい」と述べ、その理由として
「お金持ちは嘘がない。政治家として不正しない。年収10億ある人たちは。お金持ちが政治家になると金にクリーンになる」という持論を述べている。
そして「ホリエモンや青汁王子はすごくお金を持っているから、政治家になって彼が悪いことするなんて誰も思わない。彼らみたいな人が、政治家になって社会を変えていくしかない」と語った。
この動画を見て私は呆然とした。「お金持ちは嘘がない。政治家として不正しない」と立花氏は言ったが、金持ちのトランプが大統領になったアメリカでは、2018年にトランプ氏の慈善団体が資金不正使用の疑惑でニューヨーク州の司法長官によって解散させられたり、ロシア疑惑やウクライナ疑惑など数多くの問題を抱えている。
また、性的搾取を目的とする未成年者の人身取引の罪と、同様の犯行を共謀した罪で逮捕され、勾留中の刑務所で死去したジェフリー・エプスタインは、総資産は1200億円ともいわれたアメリカ有数の大富豪であった。
さらに、立花氏が語っていた「金持ちはお金を持っているからクリーン」という理論も、立花氏が期待する人物として名前をあげた堀江貴文氏や三崎優太氏によって、間違った理論であると証明される。
まず堀江氏は、お金持ちだったライブドア時代に
証券取引法違反で懲役2年6ヶ月の実刑判決を受けている。そして、三崎氏もお金持ちだった社長時代に
約1億8000万円を脱税したとして、法人税法違反などの罪に問われ、東京地裁から懲役2年執行猶予4年の判決を言い渡されている。
お金を持っている人がお金に関する犯罪に手を染めるケースがある以上、立花氏の「金持ちはお金を持っているからクリーン」理論は全く説得力がない。
立花氏のように、政治家が国民に対しネットを通し直接その声を伝えることは、その政治家の考えを直接知ることができ、政治家との距離感も縮まるためとても有用なことだと思う。しかしその一方で、たとえ国会議員の発言だとしてもファクトの怪しいものも多い。また、関連やおすすめで出てくる動画も同じような主張のものが多いため、Youtubeの中のかなり極端に偏った世界に自分自身が閉じこもってしまう恐ろしさを感じた。
その極端な世界から逃れるためには、動画を見終わった後に自分で調べ直す必要があるが、かなりの労力を要すため、多くの人がそこまではしないだろう。
このようなYoutube動画による社会の分断を防ぐためには、これからはメディアが、Youtubeで自身の考えを発信している政治家の動画をファクトチェックする必要があるだろう。
<文/日下部智海>