「秘書給与ピンハネ」疑惑の菅原経産相会見、ジャーナリスト2名が「永劫に」出入禁止に

菅原一秀・経済産業大臣の就任記者会見

菅原一秀・経済産業大臣の就任記者会見(9月11日、藤倉善郎撮影)

経産省、ジャーナリスト2名を「永劫に」出禁に

 経済産業省は10月10日、2名のジャーナリストについて、大臣会見の取材を「永劫に」禁じる旨を通告した。直接には、同日発売の『週刊文春』で「秘書給与ピンハネ」疑惑(文春オンライン)を報じられている菅原一秀経産相の会見に関する処分だが、同省・野澤泰志広報室長は、政権が変わろうとも「永劫に」と通告した。大臣が誰であろうと今後永久に経産省での会見の取材ができない、事実上の「永久出入禁止」である。

経産省は取材内容を事前検閲、取材交渉を放棄

 取材禁止を通告されたのは、藤倉善郎(私)と鈴木エイト氏の2名。それぞれ「やや日刊カルト新聞」の総裁と主筆の立場であるとともに、フリージャーナリストとしても活動している。  今回、経産省側が問題視したのは、9月11日に経産省内で行われた菅原経産相の就任記者会見での2名による取材活動だ。  2名はもともと菅原氏と統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関連公職選挙法違反疑惑を取材していた。  しかし、菅原氏側は、取材申し入れを無視したり、地元事務所に取材を申し入れに来た2名に対して菅原氏側が警察に110番通報したり「建造物侵入罪」として虚偽告訴を行うなどしてきた。
菅原事務所の通報でかけつけた警察官たち

菅原事務所の通報でかけつけた警察官たち(6月19日、藤倉善郎撮影)

 9月11日に安倍内閣の改造で菅原氏が経産相に就任したことを受け、2名は同日の経産省内での就任会見について取材を申し入れた。窓口となった経産省広報室では、当初から野澤広報室長が対応した。野澤室長は取材を申し入れた私に対して会見での質問内容を確認した。 「統一教会との関係。それから、取材中のジャーナリストに対して虚偽告訴をしている件について大臣の認識を尋ねたい」  私がそう告げると、野澤室長は「経済政策に関する質問に限る」「会見は夜遅くなるためセキュリティの都合上、事前パスを持つ方(記者クラブ加盟社)に限る」とした。ならば後日の夜間ではない定例会見なら取材できるのかと尋ねると、「検討する」として明言を避けた。  これに対して私は「大臣の姿勢を尋ねるのは就任会見こそふさわしく、後日の定例会見で質問する方が会見の趣旨から外れる」「取材内容の事前検閲は不当」「セキュリティの都合はそちらの都合であり、取材を拒む理由にならない」と答え、再検討を求めた。野澤室長は再検討を了承し電話を切った。  その後、野澤室長からは「関係方面に調整中だが、会見時間も迫ってきているので今日は難しいということで」と連絡をしてきた。私は「すでに(会見場である経産省に)向かっているので大丈夫。ギリギリまで検討してください」と答え、野澤室長は了承して電話を切った。  これ以降、野澤室長からの連絡は途絶え、二度と電話はかかってこなかった。  しかし会見時間が迫っている。私は鈴木氏とともに経産省に到着し、守衛の許可を得て入館した。身分証を見せ、取材交渉のやり取りの相手であった野澤室長の名を入館申込書に記入すると、入館パスを渡された。
就任直後の菅原経産相の到着を玄関で出迎える経産省職員たち

就任直後の菅原経産相の到着を玄関で出迎える経産省職員たち(9月11日、藤倉善郎撮影)

 会見室では特に入室チェックもなく入れたので、菅原経産相の会見を取材した。私がスチルと動画の撮影を行い、鈴木氏がペン取材。鈴木氏は質疑の際に挙手したが当ててもらえず、質問することはできなかった。
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主観と事実誤認で二転三転する広報室長の見解
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