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2019年8月にアメリカのシンクタンクであるブルッキングス研究所が
『Exporting digital authoritarianism The Russian and Chinese models』(Alina Polyakova, Chris Meserole)と題するレポートを公開した。
ロシアと中国が監視システムを海外に輸出しており、それらが独裁や権威主義政権に使われているというものだ。デジタル全体主義の輸出とレポートでは糾弾している。日本語の語感からは伝わりにくいが、「権威主義」とは「全体主義」や「独裁主義」、「専制主義」を指す言葉である。
デジタル権威主義は情報技術を用いて、国内および国外を監視し、活動を抑制する。この新しい政治形態が世界における民主主義と専制主義のパワーバランスを変えつつあり、それを加速しているのがロシアと中国が輸出している権威主義のための統治ツール=監視システムだという。
ご存じない方もいるかもしれないが、中国の情報技術は大きく進歩している。
・かつての低コストから高価格高品質製品に移行した。HUAWEI、HikVision、Yituなどを始めとする中国企業がある。
・中国政府は情報技術を単に経済的発展の道具だけに位置づけておらず、一帯一路および世界に向けた国家戦略の中に位置づけている。
レポートで確認された範囲では、
中国の監視システムが少なくとも18カ国に輸出され、最低でも36の政府がセミナーやトレーニングを受けたという。
また、最近公開されたフリーダムハウス『
Freedom on the Net 2018 The Rise of Digital Authoritarianism』も中国のデジタル権威主義の輸出について警告を発している。
ロシアと中国はともに監視や世論操作で知られているが、そのアプローチは異なる。
中国はハイテクを活用した社会操作に注力しているのに対して、ロシアは情報操作のひとつのパーツとしてシステムを活用している。前者をチャイナモデル、後者をロシアモデルと呼んでいる。ひらたく言うと、
チャイナモデルはネットとAIをフル活用した最新技術の詰め合わせで高額、一方
ロシアモデルはローテクで安価ということらしい。中国は
金盾(グレート・ファイアウォール)を始めとする各種の国内監視システムで世界的に有名である。
レポートに記載されていた中国とロシアの主な輸出先は表の通りである。