「殺していないのに絞首刑で処刑された人が何人もいる」元死刑囚の免田栄さんが冤罪の怖さを訴える

法務省の見解は「再審請求は死刑執行を停止する理由にはならない」

福岡刑務所長からの手紙

福岡刑務所長から免田さんの父・榮作さんに宛てた手紙(熊本大学展示)

 今回の展示には、免田さんが1952年1月、第一次再審請求を行った後、福岡刑務所から免田さんの父、免田榮作氏に宛てた文書3通もあった。  死刑確定から9日後の1952年1月14日付の1通目の文書では、「死刑執行後の遺体を引き取るかどうか」を尋ね、「引き取らない場合、九州大学医学部での解剖に回す。遺骨の下付願いを出す場合、火葬料として700円を請求する」と通知している。  免田さんが手書きで第一次再審請求(同年6月)を行った後の同年10月7日付で出された3通目の文書では、「再審請求の手続きが終了し、且つ、法務大臣の命があるまで死刑の執行はされない」と伝え、「火葬料を800円に値上げする」と通知している。榮作さんは刑務所からの文書に回答することを拒んだ。  安倍政権下では、オウム真理教事件で死刑囚13人が処刑されたが、麻原彰晃氏ら再審請求中の死刑確定者が6人いたほか、一般刑事事件でも再審請求中の死刑囚が処刑されている。法務省は現在、「再審請求は死刑執行を停止する理由にはならない」という見解だ。

裁判資料や獄中からの手紙などを熊本大学文書館が保存

熊本大学の展示全景

熊本大学に展示された免田さんに関する資料

 トークの司会は元『熊本日日新聞』論説主幹の高峰武氏と「熊本日日新聞サービス」社長の甲斐壮一氏が務めた。両氏は、熊本日日新聞社編『完全版 検証・免田事件』(現代人文社、2018年)を執筆している。  約2年前、免田さん夫妻が、自宅に保管している裁判関係資料、獄中からの手紙などを、「社会が教訓として学べるようどこかで所蔵してほしい」と相談した。  両氏は熊本大学と協議し、文書館が水俣やハンセンなど地元の大事件の資料保存を掲げているため、そこで段ボール箱10数箱分の資料を保存することになった。両氏は熊大から文書館の市民研究員に任命されて資料の整理を進め、資料の中から約10点を今回展示した。  高峰氏は「免田さんはとても普通の人。釈放された時、悟りをひらいた人が出てくると思ったが、酒も飲むし、やんちゃな面もある。普通の人だから冤罪の被害者になった。展示の名前には、『地の塩』という言葉を使った。  これは聖書にある言葉で、『地の中には塩があるので腐敗を防いでいる』という意味だ。免田さんがいることで、冤罪の怖さを我々に気づかせてくれる。私たちの社会が気づかないことを、身をもって気づかせてくれる人だ」と話した。
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再審希望となった獄中で助けてくれた人
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