玉樹真一郎氏。任天堂では「Wii」企画担当として活躍。現在は青森県八戸市にUターンし、「わかる事務所」代表としてコンセプト立案、人材育成、地域活性化に取り組んでいる
今年9月12日にサービスが開始された位置情報スマホゲーム「
ドラゴンクエストウォーク」。位置情報を利用し、プレーヤーが実際に移動することでマップ上を移動。出現するモンスターと戦ったりアイテムを集めたりして物語を進めていくゲームだ。
スクウェア・エニックスの名作ロールプレイングゲーム『
ドラゴンクエスト』は1986年5月に発売されて以来、圧倒的な人気を得てきた。この成功の秘密は、インターネット上で今も続いているドラクエ5をめぐる論争に垣間見ることができる。
「主人公である勇者は幼なじみのビアンカと結婚するか? それとも、お金持ちの箱入り娘フローラと結婚するか?」という論争だ。ドラクエ5のサブタイトルは『天空の花嫁』で、主人公の幼少期から青年期までを追いながら、世代を超えて巨悪を倒すというストーリー。プレーヤーは、唐突に現れる結婚イベントに戸惑うことになる。
勝気な性格ながら、主人公のことをこっそり慕う幼なじみのビアンカと、おしとやかで真面目で実直なところもあるお金持ちの箱入り娘フローラ。どちらか一人を選ばないと話が進まないのだ。
「たとえばお金持ちの娘さんを選ぶと、幼なじみを捨てることになる。たしかに、実際に社会人になると、『親がお金持ちのパートナーもいいわ』って内心で思うこともありますが(笑)。ふたりの候補からどちらを選ぶか、いまだに喧々諤々なんです。体験デザインの素晴らしい例だと思います」
こうドラクエを分析するのは
玉樹真一郎氏。任天堂にプログラマーとして就職し、プランナーに転身した。全世界で1億台を売り上げた「Wii」企画担当として活躍した後、現在は青森県八戸市にUターン。「わかる事務所」代表としてコンセプト立案、人材育成、地域活性化に取り組んでいる。
ドラクエにおけるデザインのポイントは、その人のプライベートや性格が出るかどうかだという。
「ドラクエなどのゲームでは、ゲームを始める時、主人公の名前を決めなければなりませんでした。どんな名前をつけるか、ここで性格が出ます。好きな異性の名前を名づけたばかりに、友達に好きな人がバレて恥ずかしくなった記憶を持つ当時のゲーム少年も少なくないはず。
私たちは『日常ではプライベートな部分は隠されなければならない』という思い込みの中で生きています。裏を返すと、ゲームに限らず体験をデザインする側からすれば、お客さんがプライベートをさらけ出すような強烈な体験を考えるようにすれば良いんですね」(玉樹氏)