全国原子力・核施設キャラバンで訪れた関西電力高浜発電所
まずは、今回の資金還流事件の舞台となった関西電力高浜発電所です。今年、2019/07/13に訪れています。
このときの様子は
ツイキャスにまとめられています(44分から)。
また、
Togetterでも、8:50頃からの動画のアドレスがまとめられています
福井県道149号線を北上すると高浜発電所が現れますが、最初に見える1号炉、2号炉が黒くなっています。
高浜発電所1号炉2号炉は、それぞれ1974年、1975運転開始(運開)の3ループPWR(蒸気発生器が三系統の加圧水型原子炉)で、定格電気出力がそれぞれ825MWeです。商用PWRとしては中型炉に相当します。
二基ともすでに40年の運転寿命を終えており、追加の20年(延長期間は一回のみ、40年に連続した20年間)の運転期間に入っています*。
<*運転期間の60年への延長は、2017年の実用炉規則第113条第1項改正によって現在は、認可期間満了日から起算して1年前までならいつでも申請できるが、それまでは1年3ヶ月前から1年前までと言うものであった。結果として、認可後に工事が大きくずれ込み、延長運転期間を数年間の工事期間で費やすことになっている。合衆国では運転期間終了の何年前であっても申請できる。当初の申請期間の開始日は、制度設計ミスとしか考えられない。但し、高浜発電所や美浜発電所などは、経過措置で40年を超えて申請、審査期限が2年ほど加算されている。/
改正 平成29年9月20日 原規規発第 1709202 号 原子力規制委員会決定2017/09/20原子力規制委員会>
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関西電力高浜発電所1,2号炉2019/07/13牧田撮影
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関西電力高浜発電所2019/07/13牧田撮影
格納容器上部遮蔽設置工事中の1号炉(手前)と2号炉(後ろ)
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関西電力高浜発電所2019/07/13牧田撮影
手前左から1号炉、2号炉 後方に3号炉
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反対側の内浦湾からみた関西電力高浜発電所2019/07/13牧田撮影
2号炉(左)と1号炉(右)
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高浜発電所2号炉(左) 1号炉(右)
すでに生体遮蔽板(茶筒)の改造は始まっているが、追加される上部遮蔽ドームはまだ無い。2号炉は、生体遮蔽板(茶筒)頂部の撤去作業中である。内側に見えるのは鋼製格納容器本体である
Google Map衛星写真
高浜発電所1,2号炉は、設計が古く
鋼製セミダブル格納容器(SCV)と言って鋼製格納容器側面には茶筒のような鉄筋コンクリート製生体遮蔽板がありますが、頂部は鋼製格納容器が剥き出しです。
この構造ですと、過酷事故=冷却喪失(LOCA)やメルトダウンなどを起こしたときに強い放射線が原子炉建屋上部から抜けるために大気中で散乱した放射線が地表の職員を被曝させます。これを
スカイシャインγ線と呼称します。また、ヘリコプターなどによる支援も放射線によって困難となり、福島核災害でも大きな支障となりました。
結果、鋼製セミダブル格納容器を備えたPWRでは、
上部遮蔽トップドームの新設と、側面外壁の補強という大きな工事を要することになりました。
これはたいへんな工事量、期間、費用を要する為、2ループ600MWe級の旧式炉(玄海1,2伊方1,2美浜1,2)では再稼働と運転期間延長を諦める強い動機となっています。
なお、この
トップドーム生体遮蔽板により、航空機突入やミサイル攻撃への対策になるという誤った発言をする人が居ますが、この改造は、
航空機突入やミサイル攻撃への対策を考慮していません。とくに弾道ミサイルにはボール紙のように打ち抜かれ、全く耐えられません。航空機突入は、確率的に無視しうるほど低いという用地選定時の評価で対策としています。しかし、日本の空には米軍機という名実ともに無法航空機が飛び交い、伊方発電所に突入し幸運にも外れた前例がありますし、意図的な航空機突入=Kamikaze Attackも考慮に入れることとなった結果、特重施設のバックフィットが行われています。
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内浦湾より撮影した高浜発電所 2019/07/13牧田撮影
屋外開閉所が見える
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内浦湾より撮影した高浜発電所 2019/07/13牧田撮影
左から3号炉、4号炉
鋼製ダブル格納容器を採用しているので、格納容器の改造を要しない
高浜3,4号炉は、1985年運開の第二次改良標準化PWRで、鋼製ダブル格納容器を持っています。また、40年の運転寿命はあと6年弱残っていますので、60年への延長の申請と工事を今後の定検とあわせて早めに行うことが出来ます。
このことから3,4号炉は、1,2号炉と比して、遙かに今後の投資額が少なく、運転期間を失う事も最小限に抑えられます。1,2号炉は、現時点で20年の延長運転期間を5年失っており、工事の遅れから少なくとも更に1年失います。また、特重工事も遅れており、加えて1年以上失う可能性があり、合計すると20年のうち7〜8年を運転できずに失うこととなります。
残り12年のうち定検で3年前後運転できませんから、兆円規模の投資をして実質10年しか運転できない計算となります。
あくまで見て判断しただけですが、
四国電力伊方発電所と比しても工事の遅れが顕著で、1,2号炉延命工事に足を引っ張られる形で3,4号炉の特重工事が更に遅延するのではないかと憂慮します。
これでは採算をとれるとはとても考えられません。合衆国の原子力電力事業体ならば、こんな無茶な投資はしないでしょう。
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内浦湾より撮影した高浜発電所 2019/07/13牧田撮影
写真外左に4号炉がある
特重施設の建設中であり、莫大な費用を投じている
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上写真中央部拡大
高浜発電所でもかなり規模の大きなトンネルが建設されている
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内浦湾より撮影した高浜発電所全景 2019/07/13牧田撮影
家族連れなどの釣りの名所である。他にスキューバダイビングでも栄えている
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内浦湾より撮影した高浜発電所全景 2019/07/13牧田撮影
前の写真の左側で音海地区と関電の社員駐車施設、社宅、貯木場が見える
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内浦湾より撮影した音海ヤード整備工事現場 2019/07/13牧田撮影
関西電力と前田建設工業による 詳細不明