記者会見で頭を下げる関西電力の八木誠会長(左から2人目)、岩根茂樹社長(同3人目)ら=2日、大阪市福島区 (時事通信社)
去る9月27日未明、関西電力経営陣が長年、高浜町の元助役から億単位の資金還流を受けていたことが報じられました*。
<*
関電社長ら高浜町元助役から1億8千万円 「返却した」 2019/09/27朝日新聞>
このスクープには、当日早朝には新聞各社も追随しました。従って、ガセネタの可能性はないです。しかも今年3月10日には資金還流を告発する怪文書がばらまかれ、すでに税務調査も入り、修正申告、追加納税にも応じていることから、資金還流は本人達が認めていることになります*。
<*
関西電力3億2千万円“裏金” 今年3月に出回った告発文書【独占入手】 2019/09/29 今西憲之, 週刊朝日>
報じられるところでは、金品授受は分かっているだけで
20名の関西電力経営陣に及び、期間も分かっているだけでも
13年を超えるとのことです。執筆時点の9月30日で報じられているだけで
三億二千万円の金品が、13年にわたって20人の関西電力経営陣へ個人宛で還流しており、これは前代未聞の企業醜聞です。
著者は、研究妨害*のために裏取りの途中で中断していましたが、原子力PAにおける闇資金についてインタビューでその実態の片鱗を得ております。あくまで証言のみですが、例えば、
小学生のランドセルに100万円を入れて回っていた、
町の寄り合いで10万円を配って回ったなど、情けない話をいくつも聞いて回りました。しかし少なくとも資金供与、資金還流で電力会社の役員どころか社員が個人の名宛てが出てくることはありませんでした。
<*この研究妨害に電力会社は無関係>
今回のスクープは、大規模且つ広汎な資金還流事件を露見させており、原子力電力事業体のコンプライアンスとガバナンスの崩壊を示しています。類似例としては、フィリピンのバターン半島原子力発電所(Bataan Nuclear Power Plant, BNPP)*が思い起こされます。
<*Bataan Nuclear Power Plantは、WH(ウエスチングハウス)によるPWR 621MWeで、1976年に建設開始、1984年にほぼ完成するも1986年のエドゥサ革命後にアキノ政権が閉鎖を決定。現在も維持管理中だが、建設費が少なくとも約23億ドルに加え稼働には追加で30〜40億ドル必要とされる。建設時期から、四国電力が運転断念した伊方2号炉に近い設計と考えられ、伊方2などと同等なバックフィットが必須であり、現実には50億ドルを超える追加費用が必要であろう。600MWe級の原子炉に合計75億ドルは全く意味のない話であり、50億ドルで風力発電機を大量建設し、変動保障用の天然ガス火発を3基建設した方が圧倒的に速く、ましであろう。なおBNPPは試運転すらしておらず、原子炉の中を観光客に公開している。|参照:
“フィリピンの「動かない原発」で、日本の杜撰さを再認識2012/04/26〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)” >
BNPPは、TMI-2事故(スリーマイル島原子力発電所事故)とエドゥサ革命、チェルノブイル核災害によって建設の中断、政権による閉鎖が決定されたために稼働できなかったとされますが、実態は、電力事業体、政府、大統領府、WHなど利害関係者の間で賄賂、資金還流・循環が行われていたとされ、内部は腐敗と崩壊の極みにあったとされています。結果、マルコス政権下ですら4,000箇所を超える欠陥が発見され、建設を著しく遅滞させました*。
<*
The Bataan plant – The sequel, 1993/03/09 Wise International>
腐敗した原子力電力事業体に原子力安全を担保する能力はありませんので、BNPPの閉鎖は当然ですし、そのようなプラントは何処に深刻な欠陥を抱えているか分かりません。国内では高速増殖炉原型炉もんじゅがその事例に該当します。
関西電力が、そのような駄目企業、駄目事業体ではないという信頼が今回の大規模資金還流事件により大きく揺らいでるのです。
さて今回の大規模資金還流事件について著者は報道で知り愕然としたわけで、自前での情報は持ち得ません。但し、今年7月の全国原子力・核施設キャラバンで
高浜発電所については徹底して撮影をしており、
関西電力美浜、高浜発電所の異様な工事、到底採算性などあり得ない企業経営を揺るがしかねない大赤字必至の再稼働・延命に向けた工事を見て、関西電力の経営陣に深刻な病理があるのではと強く感じました。
今回は、その当時の映像、写真をご紹介して関西電力の美浜、高浜の高経年炉(旧式炉)への異様な執着について執筆します。