再開発工事が進み、日に日に建物が少なくなっていく渋谷・桜丘。
桜丘は渋谷駅に近いながらも東京大空襲で焼け残り、坂と狭い路地で構成される街並みとなっていたが、東急グループの主導で2018年末から大型再開発が実施中だ。その開発面積は1期部分(渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発)が約2.6ヘクタール、2期部分(仮称:ネクスト渋谷桜丘地区市街地再開発)が約2.1ヘクタールで、合わせると東京ドームの面積よりも少し広いほど。1期部分だけでも、立ち退き対象・解体となる物件は約60棟にも上る。
桜並木のなか、解体が進む桜丘町。
右側の街区も数年後には消えてしまう。
桜丘地区は駅から横断陸橋を渡らないとアクセスできず、また街路も狭く複雑で、渋谷の駅チカにしては家賃水準が低かった。そのため、ライブハウスや楽器店をはじめ、ミュージックバー、ホビーショップ、種目に特化したスポーツ用品店、言語に特化した語学教室など、個性的でマニアックな店舗が多く集まっており、渋谷の「文化発信拠点」としても知られていた。以前、桜丘では「老舗」や「大手チェーン店」については移転せずに「閉店」となった店舗が多いことについて触れたが、その一方で桜丘から移転し、すでに新天地での営業を開始しているという店舗も少なくない。
1年前から移転店舗では引っ越しが進んでいた(2018年11月)。
そこで、今回は「音楽・趣味関連」、「習い事教室」など、渋谷の「文化発信拠点」ともいうべき業種を中心に、2018年末に着工された桜丘の1期再開発地区から新天地へと移った店舗たちの「移転先」について調べていく。
桜丘地区とその周辺の再開発エリア図。(筆者作成)
移転先が判明した店舗のうち「半数」が「音楽・趣味・教育関連」
桜丘の1期再開発地区で、2018年から2019年春までの約1年間に「店舗移転」となった店舗やオフィスのうち、筆者の調査で2019年春までに移転先が判明したものは
67店舗あった。なお、近隣他店と統合となった店舗については、統合店の大幅拡張などをしていない限りは「移転」に含んでいない。
今回の調査では、その67店舗を「文化発信拠点」と位置付けられる「音楽・趣味・教育関連」と、「その他(音楽・趣味・教育関連以外)」に分類。さらに、「音楽・趣味・教育関連」を「ライブハウス・ホール」、「物販店(楽器店、スポーツ用品店、ホビー店など)」、「飲食店(ジャズバーなど)」、「オフィス・サービス(音楽・芸能関連など)」、「教室・塾」「アミューズメント等」に、「その他」を「物販店」、「飲食店」、「オフィス・サービス」、「医療関連」、「その他」に分類し、統計を取った。また、一部の店舗や関係者には聞き取り調査もおこなった。
移転先が判明した全67店舗のうち、
「音楽・趣味・教育関連」は半数以上の34店舗を占め、桜丘において文化発信拠点と位置付けられる店舗の比重がいかに高かったかを伺い知らされる結果となった。
移転先が判明した67店舗の内訳。
移転先が判明した67店舗の全てが東京23区内、そして多くは渋谷エリア内への移転であった。そのため、今回は移転先を「
渋谷:駅チカ・繁華街」、「
渋谷:桜丘地区周辺」、「
渋谷:道玄坂周辺」、そして「
渋谷エリア外」の4地域に分け、「
どのような業種がどこに移転する事例が多かったのか」を分析してみる。