JCO臨界事故の悲劇から20年。改めて振り返る事故の概要と要因

田中俊一氏と村上達也氏が考える事故原因

 田中俊一氏はJCO臨界事故についての講演の終盤で、この事故を誘発した3つの主な原因を挙げた。  JCOによる許認可の条件を無視した操業に加え、“発注者”による変更許可申請を越えた要求や、作業の丸投げ、そして、“監督官庁”による安全審査での違反見逃しである。これと同じ3つを、田中氏と同じ事故当事者である村上達也 前東海村長も自身の講演で挙げていたのは非常に印象的だった。  最後に、その後のJCOについて少し述べておこう。JCOは2000年3月28日に科学技術庁より核燃料の加工事業許可を取り消す行政処分を受け、2003年4月18日にはウラン再転換事業の再開を断念している。2000年10月11日には茨城県警によりJCO東海事業所の所長ら6名の職員が逮捕され、その後、水戸地方検察庁により刑事起訴された。2003年3月3日、水戸地裁より、その6名に執行猶予付きの禁固刑や罰金刑が、そして、法人としてのJCOに罰金刑が言い渡された。控訴はされず、このまま刑が確定している。なお、有罪判決を受けた6名のうちの1名は、沈殿槽での作業に参加し、重度の被ばくを受けながら唯一生還したY氏である。彼は被害者でもあり、加害者でもあったのだ。  余談であるが、JCO臨界事故が発生した日の翌日(1999年10月1日)には、小渕内閣(第2次改造)の組閣が予定されていた。しかし、小渕恵三首相は事故対応を優先し、組閣を4日間延期した。  一方、今年の9月11日には、台風15号で千葉県とその近県が甚大な被害を受けるなか、安倍内閣(第4次安倍・第2次改造)が悠然と組閣を行っていた。 <取材・文/井田 真人>
いだまさと● Twitter ID:@miakiza20100906。2017年4月に日本原子力研究開発機構J-PARCセンター(研究副主幹)を自主退職し、フリーに。J-PARCセンター在職中は、陽子加速器を利用した大強度中性子源の研究開発に携わる。専門はシミュレーション物理学、流体力学、超音波医工学、中性子源施設開発、原子力工学。
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