写真/JAEA公開資料より
去る2019年9月9日、茨城県大洗町にあるJAEA大洗研究所内のJMTRにて、
原子炉二次冷却系冷却塔が台風による強風のためにすべて倒壊したという事故が日本原子力研究開発機(JAEA)により公表*され、茨城新聞ほか、新聞等で報じられました**。
<*
材料試験炉(JMTR)二次冷却系統の冷却塔倒壊について2019/09/09 日本原子力研究開発機構>
<**
非稼働の研究用原子炉、冷却塔倒れる 台風影響か 茨城 2019/09/09朝日新聞>
2019年9月9日朝7時頃、台風15号が茨城県内陸部を通過し、太平洋上に抜けました。
同日7:40に、
JMTRにおいて原子炉二次系冷却塔がすべて倒壊しているのが見回り中の協力会社社員により発見されました。同日6時には異常は無かったとのことです。以後、執筆時点の9/15に分かっていた範囲での時系列で並べます。
◆2019/07/09
6:00頃 巡回するも異常なし
7:40頃 見回り中の協力会社社員により二次系冷却塔の倒壊が発見される
台風の強風により大洗研究所材料試験炉(JMTR)二次冷却系統冷却塔(横約30m、縦約11.6m、高さ約16.5m)が倒壊していることをパトロール中の協力会社作業員が確認した。
9:16 茨城県への通報
13:30 JAEAによる意志決定
試験研究の用に供する原子炉等の設置、運転等に関する規則第16条の14第3号(安全上重要な機器の故障)に該当するため、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第62条の3の規定に基づく法令報告事象と判断した。
時間不明 原子力規制委員会(NRA)への報告
15:07頃 NRAによる公表
15:15頃 マスコミによる報道
JMTRは、初臨界後38年経過した2006年に停止して以降、2030年までの運転を目指して大規模改修工事をおこなっていました。改修終了直後の2011年3月に福島核災害が起こり、新基準への適応が資金的に不可能となったことから2016年に廃止の方針となり、現在廃炉準備中の
事実上「死んだ原子炉」です。
すでに停止期間は13年に及び且つ、二次冷却系は原子炉炉心と分離していますので
放射能漏れなどの外部への影響はありません。
当時は、中型で強い台風15号が千葉県から茨城県にかけて上陸、通過しました 。
このため千葉県南部と茨城県南部は、台風の危険半円に入り、たいへんに強い暴風に見舞われました。
現在千葉県は、台風15号により甚大な被害を受け、広域停電が継続中ですが、これも危険半円側に見られる被害です。同じ事が昨年の台風第21号でも生じ、大阪平野に甚大な影響*を与えたことは記憶に新しいです。
<*
電力の矜持にかけて――台風21号被害と電力復旧の現場から2018/09/09電気新聞>
台風の可航半円と危険半円
北半球では、台風の進行方向右側では、台風の進行速度と台風の風速が合成されてたいへんに風力が大きくなる
一方で、進行方向左側では、風速と進行速度が打ち消し合って合成風力は小さくなる
(出典:風の強さと吹き方 気象庁)