大洗の材料試験炉JMTR倒壊事故発生。あまりに衝撃的な「木造」冷却塔の安全性と影響は?
JMTRにおける冷却塔倒壊事故からの教訓
いずれにせよ、現在入手できる写真を詳細に見る限り、倒壊した冷却塔は、一般の施設でもかなり問題があると思われます。原子力・核施設でこのようなものが大改修後も残っていると言うことはたいへんな不安要素となります。 すべての研究用原子炉について、たとえ休止中であっても、このような建築物や設置物が残っていないか、万が一にも見落としがないかを総点検する必要があるでしょう。 また、JMTRで2011年から今までに発生したインシデントやアクシデントは多すぎます。明らかに資金不足、人員不足、士気の低下が著しいと考えるほかありません。 JMTRにおいても、再稼働後は運営費を一部でも自分で稼げという文科省からの圧力があったことはJAEAの資料から分かっています。しかし、研究施設、実験施設が利潤を得ることは基本的に無理があります。高速増殖炉原型炉もんじゅ失敗の原因の一つでもあります。 お金は出すべきところには出す、出せないのなら全部やめる。これが原子力・核開発の基本です。 JMTRすら維持できない国に原子力産業立国など不可能です。身の程にあった規模に縮小するか、投資規模を一桁増やすかの決断が必須と言えましょう。 『コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」』緊急番外編JMTR冷却塔倒壊事故編1 <取材・文・図版(一部)/牧田寛>日本原子力機構大洗研究所の冷却棟崩壊について、研究所の説明を受け、現場を見てきました。台風当時、風速30.9メートルの風が記録されているとのこと。20年前・21年前に全面更新されたとはいえ、50年前の木造建築を使い続けていたことに驚きました。 pic.twitter.com/h7e8jBjUmI
— 川澄 敬子 (@menotakasade) 2019年9月12日
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まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中
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2019.09.16
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