このほかにも、建物躯体の経年劣化による破損など、初臨界から50年経過した研究炉としての限界が表面化し、新基準への適応に追加で400億円の費用が見込まれたことから、2016年10月に廃止の方針が決まりました*。
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廃止決定の研究炉、180億円が消える…無駄に維持費も2018/12/26 朝日新聞>
廃止には
費用が180億円、期間が20年かかるとのJAEAの見立てですが、すでに13年間停止している研究用原子炉の解体に20年というのはあまりにも長すぎます。
合衆国では、商用大型原子炉の解体廃炉には10年しかかかりません。
原子力・核施設は、維持費用が一般施設の一桁から二桁大きな管理費用がかかりますので、管理期間が長ければ長いほど莫大な資金を要します。20年の期間では、管理費用だけで200億円を超えかねません。
そして何より、原子力輸出立国を目指すと自称する国がJMTRを廃止しながら後継炉が無い。考え得る限りおよそ最悪です。
この問題は、正確には熱量計算をせねば分かりません。しかし、JMTRは、所詮は定格熱出力50MWth(5万キロワット)と、大型商用原子炉の熱出力3GWth(300万キロワット)に比して1/60しかありません。
また、原子炉の冷却水は、加圧水型原子炉(PWR)と同様に熱交換器によって1次系と2次系に分離されており、炉心の冷却水は二次系が破断しても影響を受けません。
一方で、二次系冷却塔を失えば最終ヒートシンクを失います。この最終ヒートシンクの喪失によって福島核災害が生じていますので、最終ヒートシンクの喪失は深刻です。しかしながらJMTRは、原子炉そのものがカナルを含む巨大な水槽の中に沈んでいます。
また、JMTRは、原子炉内圧15気圧、運転温度50℃前後ですので、仮に二次冷却系の最終ヒートシンクが壊れても炉プールの沸騰までには非常に長い時間がかかり、炉プールに冷却施設を仮設するなり、炉プールに水を足すなりの対応に要する時間は、十分にあります。また、大洗研究所の構内に大きな池がありますので、水源は確保されています。従って、人がダメージコントロールできる限り事態を収束へと導くことが出来ます。
なお、一次系の出口、入り口温度が勝手に上昇すると直ちに原子炉停止しますので、その後の熱出力は崩壊熱依存となります。核燃料の照射度によりますが、商用炉と異なり照射度は大幅に低く、崩壊熱を大きく見積もってもすぐに熱出力5,000kWth(大型ディーゼル発電機程度)以下、おそらく数百キロワット程度に下がりますから、人間の制御を外れることは難しいと思われます。
一般に、研究用原子炉は出力がたいへんに小さいために、受動安全性が高く、制御を失って原子炉が崩壊すると言うことには至りにくいです。
結論を言いますと、
仮にJMTRが運転中に最終ヒートシンクが失われても、原子炉が崩壊に至る可能性はたいへんに低いです。一方で、最終ヒートシンク喪失は、やはり原子力安全にとって重大インシデント=事故となりますので、非常に長期間の運転中止に陥ります。かわいそうに、利用者の博士後期課程学生は、真っ青になって研究テーマを変更することになります。