海上自衛隊幹部学校の「特別講話」に改憲派“安倍応援団”が続々登壇の危うさ

まるで右派論壇誌の見出しのようなラインナップ

 また、平川祐弘氏は、櫻井よしこ氏が理事長を務める「国家基本問題研究所」の理事及び研究顧問です。「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」で多数派を形成した「保守派」の一人であり、ヒアリングでは「万世一系の世襲の天皇は神道の文化的伝統の中心的継承者」などと発言。第二次安倍政権誕生前に存在した「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の発起人の一人でもあります。また、役員を務める「日本戦略研究フォーラム」(会長・屋山太郎)の内部に作られた「対外発信助成会」の代表として、『慰安婦と戦場の性』(秦郁彦)の英訳出版(2018年)に取り組むなど、「歴史戦」でも“活躍”中。  さらに、竹田恒泰氏は一般にもよく知られた人物ですが、海幹校に関連して、次の事実を指摘しておきたいところです。  2016年、竹田恒泰氏の”弟子”として紹介され、また自認もしている竹田塾門下生の吉木誉絵氏が海幹校客員研究員が就任し、その後「内規の特例を使って、吉木の任期を〈2年〉に延長」(参照:自衛隊の危機―なぜ、ネトウヨの浸透を許しているのかー|VICE)がなされ、2018年3月まで同役職に就いていました。特に研究実績もない吉木氏が、「研究員」就任、「特例」としての任期の延長などから考えても、今回の事案と無関係ではないことは明白だと思います。ちなみに、竹田氏の「講話」も吉木氏の任期中に行われたということも興味深い事実です。  曽野綾子氏の演題は「私のアフリカ体験」とのこと。ここで思い出すべきは15年2月産経新聞掲載のコラムにおいて開陳された曽野氏の人権感覚です*。  あろうことか、南アフリカでかつて行われていた「アパルトヘイト」を容認したうえ、「日本でも移民を受け入れた上で、居住区を分けた方がいい」などと主張したことは記憶に新しいと思います。当然ながらこの主張に対しては、アフリカ大使館を始め各方面から非難の声**があがりましたが、曽野氏は謝罪も撤回もしていません(ちなみに、曽野氏は、朝日新聞の取材に「「アパルトヘイト称揚してない」などと回答しています***)。いまだに紙面に登場させている朝日新聞(18年10月20日)の見識が疑われます。 <*曽野綾子氏コラムに「アパルトヘイトを賛美し、首相に恥をかかせる」海外メディア報じる|HUFFPOST> <**曽野氏コラムで南ア駐日大使が本紙に抗議  – 産経ニュース > <***曽野綾子氏「アパルトヘイト称揚してない」:朝日新聞デジタル >  ざっと講師を紹介しましたが、右派論壇誌の見出しかどこかの右派団体が主催した講演のようです。問題は、これが自衛隊幹部学校の“教育”の一環として実施されていたということ。まさしく由々しき事態です。

改憲運動の象徴的人物が海自の幹部学校で語るという「意味」

 言うまでもなく、櫻井氏は現在の右派運動を語る上では欠かせない最重要人物の一人です。様々なメディアにも露出、その旺盛な言論活動により、改憲や歴史否認という右派のアジェンダ実現に大きく寄与してきました。共同代表を務める「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の幟旗には櫻井氏の顔写真がプリントされていることが示すように、正に改憲運動の象徴と言える人物だということは衆目の一致するところでしょう。
憲法改正を実現する1,000万人ネットワーク - 美しい日本の憲法をつくる国民の会

美しい日本の憲法をつくる国民の会

 その櫻井氏が海上自衛隊の幹部を目指す人材に向けて行った「講話」の演題が「令和における日本の安全保障と憲法のあり方」(!)と言うのですから呆れるほかありません。  海幹校のページには「講話」内容の全ては掲載されていませんが、類似のタイトルが付された6月3日産経新聞配信のコラム*を読めば、中国脅威論を唱え、改憲の必要を訴えるものであったと考えるのが自然ではないでしょうか。 <*【櫻井よしこ 美しき勁き国へ】改憲で令和乗り越えよ|産経新聞>  同日の学生による短いレポートにも〈継続を続ける中国の台頭を背景に、令和という新しい時代を生きていくにあたり、日本の歴史・文化のルーツに遡りながら、現在我が国が直面する安全保障上の諸問題について、周辺国の最新の地政学的動向を交えた非常に示唆に富む的確なご意見を頂けた〉とある通り、やはり櫻井氏は日頃の主張を繰り返したものと思われます。  憲法遵守義務は当然のことながら、いや、実力組織の自衛隊員には特に厳しくそのことが求められているはずですが、こんなことが公然としかも長期にわたり続けれているとは、まったく言語道断と言わなくてはなりません。
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