入管職員「仮放免の人たちは戻ってくる可能性があるよ」
記者会見の様子。右から大橋毅弁護士、デニズさん、サファリさん、駒井知会弁護士
記者会見のなかでデニズさんはこう証言した。
「私は彼が帰ってきたことに驚かなかった。というのは、職員から
『仮放免の人たちは戻ってくる可能性があるよ』と聞かされていたからです」
そして今、シャーラムさんに続く短期仮放免者も一様に更新が不許可となり、牛久入管に続々と戻されている。だからこそ、仮放免されたデニズさんは今、自分の問題としての不安を隠さない。
デニズさんは8月2日に仮放免されたが、やはり自身の仮放免延長が認められないのではと怖れている。仮放免更新手続きは8月16日朝9時。難民認定申請中の人物に対して3年2か月も収容し、わずか2週間の仮放免ののちに、再収用するのか?
仮放免後、デニズさんが行った精神科の診断書。長年の収容生活での拘禁反応が認められている。極めて危険な精神状態だ
筆者は、デニズさんが収容されているときに5回ほどの面会取材をしている。アクリル板の向こうのデニズさんからは、精神状態の不安定さが感じとられた。自分ではどうにもならない憤りを私にぶつけてきたこともある。仮放免後に精神科を受診したデニズさんは、「拘禁反応の疑い」があると診断された。精神のバランスを取り戻すには長い治療が必要だ。だがそれも受けられないまま、その症状を悪化させる場所へと戻るのはどれほど不安なことか。
デニズさんは自分たちを動物のように扱う入管職員の姿勢に憤りを表していた。その暴力についてはここでは省略するが、デニズさんは再収用への恐れから、会見中に涙を流した。
サファリさん
サファリさんもイランでの迫害に耐えかね、1991年に来日。難民認定申請をしていたが、デニズさんとほぼ同じ3年1か月収容されていた。そして今回のハンストで、何度も吐血や昏睡を経験し、体重が15Kg落ち、仮放免後の今も摂食障害に陥っている。
サファリさんは7月31日に仮放免されるが、そのとき、職員から以下のことを言われた。
「今回の仮放免は2週間だけど、逃げないで帰ってきてね」
つまり今回の仮放免は初めから再収用することが決まっている措置としか言いようがない。仮放免を喜ぶどころか、むしろ不安に襲われたサファリさんは、精神科を訪れて「抑うつ状態」との診断を受けた。彼を抑うつ状態にした原因は、3年以上もの長期収容だ。治療を受けないままその場所に戻ることに、支援者の一人は「サファリさんはもう収容に耐えられなくなっちゃうよ!」と、怒りと悲しみを見せていた。