救命講習を受けてわかったこと。人命救助時に最も必要なのは「勇気」
前編では、講習内容を中心に紹介したが、後編では、各業界への救命講習受講の広まりや、AED普及の現状、救急救命士が語る「処置をためらう人への要望」なども併せて紹介しよう。
【前回記事】⇒突然の事故・災害・犯罪に備え、受けておいて損はない「救命救急講習」
講習を担当した救急救命士らによると、この救命講習を団体で申し込む業界があるという。中でも多いのが、各教育機関や、トラック・タクシー・バスなどの旅客・貨物業界などだ。
子どもを守る立場にある教員はもちろんだが、日々道路を走るトラックやバス、タクシーのドライバーは、事故に遭遇する確率が高いだけでなく、その当事者にもなりやすいため、同講習の受講は昨今、それぞれの業界内で積極的に取り組まれている。
中でも街中を走るタクシーにおいては、会社がドライバー全員にこの救命講習を受講させているところも多く、都内でタクシーに乗ると、助手席に「救命講習修了証」が掲示してあるのをよく目にする。
事故を起こすと一般車同士よりも被害が大きくなりやすいトラックやバス業界でも、ドライバーへの受講促進や、AED搭載車を走らせる企業が増え始めている。
受講後に配られる、前出の「救命講習修了証」には、基本的には期限はないが(3年や5年とする自治体もある)、これらの業界では、ノウハウ維持のため、2年から3年おきに繰り返し受講させていることが多い。
講習で実際使用して感じたことだが、AEDの使用方法自体は、それほど難しくない。
蓋を開け、自動的に流れる音声ガイダンスや画面の絵に従って処置をすればよく、中には、液晶画面がカラーで見やすく改良されているタイプのものもある。
特にここ最近のAEDは、ひと昔と比べると、より分かりやすく、誰にでも使いやすくなったという。
中でも特筆すべきは、外国語対応のAEDの普及だ。
昨今急増する来日外国人。労働者や観光客の中には、当然日本語が理解できない人も多い。
そんな外国人でも使用できるよう、外国語での音声ガイダンスや外国語表示対応のAEDが都心を中心に広まり始めているのだ。
アパホテルでは、全館に設置済みだったAEDの一部をバイリンガル機能付きのAEDに変更し、増える外国人宿泊客に対応。
また、京急電鉄では、今年4月から日本で初めて同様のAEDを全線72 駅の改札口付近に設置した(東京都交通局との共同使用駅である泉岳寺駅をのぞく)。
その多くが「外国語モード」にすると、日本語の次に英語でのガイダンスが流れるタイプのものだが、現在日本で製造されているAEDには、16か国語に対応できる機種もあるという。
余談だが、外国人が倒れた場合のAED使用に対して、講習中、救命士から興味深い話があった。
「人種によっては日本人より比較的毛深い人もいる。毛の上にパッドを貼ると上手く電流が流れないので、その時は備え付けのレスキューセットにあるカミソリを使うといい。が、時間勝負の現場の場合、予備のパッドがあるのであれば、そのうちの1枚を使って、一気にはがす要領で毛を抜くと早い」
これに対して思わず「痛そうだ」と漏らすと、
「処置対象者は、絶対に『痛い』と言わない。言える人にAEDは必要ない。必要な時は思い切りやってほしい」と話していた。
先日、筆者が地元消防署で受講した「救命講習」。
外国語対応のAEDには毛深い人種用のカミソリまで付帯
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