救命講習で使用する人形とAED
連日のように報じられる悲惨な事件や事故、自然災害のニュース。それらの犠牲者の中には、早期に処置していれば助かっていた命も少なくないはずだ。
これら不可抗力に対して、「自らの生き残り」のための防犯対策や救急箱、防災用具の準備が万全だという人は多いだろう。が、その一方、「他人の救急救命」に対するノウハウの習得に関しては、なぜか希薄である感が否めない。
人は、医療従事者でもない限り、いざ「息をしていない人」に遭遇しても、パニックに陥り冷静に対応できないのが常。実際、トラックに乗っていた筆者にも、目の前で起きたクルマとバイクの交通事故で、倒れて動かないライダーに動揺し、苦汁を嘗めた過去がある。
あれから数年。再びあのような突然の出来事に遭遇した時、今の自分は何ができるのだろうか。いや、何かできるのか。こうして模索していたところ、その存在を知ったのが、各市区町村で定期的に開催されている「救命救急講習」だった。
自治体によって講習内容に多少の違いはあるが、今回は、筆者が地元の消防署で受けた救命講習について紹介したい。
この「救命講習」は、住居や勤務先の各市区町村の消防署などで、誰もが受講できる「応急処置・救命処置」に関する講習だ。
筆者の地元では、講習料は無料。地域や自治体によってはテキスト代などが必要になるところもあるが、それほど高額になることはない。
救命講習には種類があり、一般的な救命を学べる「普通救命講習Ⅰ」や、小児・乳児の救命に特化した「普通救命講習Ⅲ」、より高度な救命を学べる「上級救命講習」などがある。筆者が今回受講したのは、「普通救命講習Ⅰ」だ。
会場となった地元の消防署に集まったのは40~50代が中心の30名弱。女性が6~7割を占め、その多くが1人で参加していたのが印象的だった。
講師を務めた救急救命士によると、出席者は毎度30名ほどになるそうだ。上級救命講習や、講習普及員になれる「応急手当普及員講習」では、抽選になるほどの応募が集まることもあるという。
「物騒な世の中なので」「老親のために」と受講動機はさまざま
会場に集まったうちの数名に、今回の受講の動機を聞いたところ、「回覧板で存在を知ったから」、「高齢になった親にいつ何が起きるか分からないから」、「物騒な世の中なので、最低限の技術は身に付けておいた方がいいと思ったから」といった答えが返ってきた。
講習は、応急手当の基礎知識や、救命処置の手順などの座学が40分ほど。
意識不明に陥りやすい病気や、その応急処置、出血した際の止血方法、異物や食べ物による窒息に対する処置、AED(自動体外式除細動器)の基礎知識などの説明を受ける。
この際、地元の救急患者件数や、その地域ならではの救命活動事情、さらにはAED設置場所なども教えてもらえるため、受講場所が原則「住居や勤務先の市区町村」に定められているのも納得だ。
その後、5,6名のグループになって行われる実技講習では、人形や訓練用のAEDを使い、胸骨圧迫(心臓マッサージ)や、AEDの使い方を学ぶ。