講習で学んだ、救命処置の大まかな手順を紹介しておこう。
1.人が倒れているのを発見したら、周囲の安全を確認
2.「大丈夫ですか」と声を掛けながら肩を叩き「痛み」による刺激を与える
3.周囲に協力を求める
4.呼吸の有無を確認
5.呼吸していなければ、胸骨圧迫と人工呼吸を開始
6.AEDの使用
周囲に応援を求めてやって来た協力者には、救急車とAEDの手配を頼むのだが、その際、「誰か救急車を呼んでください」、「誰かAEDを持って来てください」とするのはNGだという。
「『誰か』とすると、誰もやらないことがある。必ず相手を指さし、目を見て『あなたは救急車を呼んでください』、『あなたはAEDを持って来てください』と指示してください」(同救命士)
誤解している人も多いのだが、AEDの使用は、胸骨圧迫とセットだ。AEDを施せば、胸骨圧迫をしなくていいわけではない。
また、AEDは、中に入っている2枚のパッドを処置対象者の所定の位置に貼ると、AEDが必要かどうか、自動的に解析してくれる。「AEDの必要がない」という音声が流れたら、胸骨圧迫と人工呼吸のみを救急隊員が到着するまで続ける。
現在、救急車が現場に到着するまでの平均時間は8分(地域で差異あり)。
繰り返しになるが、実際に人が心肺停止で倒れていたら、救急隊員が到着するまでの間、蘇生活動をし続けていなければならない。
今回、講習を受けてよかったと思ったのは、実際に機材に触れて救命方法を学べたことだけではなく、この8分間、30回の胸骨圧迫と2回の人工呼吸を安定的に1人で繰り返すことが、一般人にはほぼ不可能だと身をもって知れたことだ。
AEDからは、1分間に100回のメトロノームが流れる。体重をかけ、その音に合わせて行う胸骨圧迫は、思った以上にハードだ。体力に自信のある筆者でもかなりキツかった。
前出の救急救命士曰く、こうした体力的問題を解消するには、「いかに多くの協力者を集められるか」が重要になるとのこと。
実際、8分間の半分である4分間をグループ6人で回してみたが、それでも相当な体力を要し、翌日、なぜか腹筋がにわかに筋肉痛になった。
次回は、各業界への講習受講の広まりや、AED普及の現状、救急救命士が語る「処置を躊躇う人への要望」などについて紹介する。近日公開予定だ。
<取材・文/橋本愛喜>