れいわ新選組と山本太郎氏論・ポピュリズムとリアリズムの狭間で

reiwagaisen

れいわ新選組品川街宣

 2019年の参院選が終わった。  大きなニュースのない選挙の中、れいわ新選組が2議席を獲得したことが話題を呼んだ。  本稿では、山本太郎氏の6年間の議会活動を振り返るとともに、一体れいわ新選組、あるいは山本太郎氏が何を目指しているのかを考えたい。

山本太郎氏は、いつ消費税をメインテーマとするようになったのか?

 山本太郎氏の政治活動は脱原発運動から始まった。これは周知の事実だろう。  しかし、今回の選挙に置いて「脱原発」は、れいわ新選組のメインテーマとして語られなかった。  もっぱら話していたのは消費税のことである。  もちろん、原発即時停止、は政策の中には入っているが、消費税や奨学金の問題などから比べるとだいぶ下にある。  それでは、山本太郎氏はいつ、消費税をメインテーマにするようになったのか。  例えば、「新党ひとりひとり」時代には、このように発言している。 ”安倍総理は、消費税を引き上げて税負担を求めていく以上、政治家も身を切る決意を示さなければならないということから国会議員の歳費二割削減も決まっていったというような趣旨のことをおっしゃっていますよね。平成十九年四月二十四日、第一次安倍内閣で閣議決定された「公務員制度改革について」という文書には、「公務員は、まず、国民と国家の繁栄のために、高い気概、使命感及び倫理観を持った、国民から信頼される人物である必要がある」と書いてあります。  稲田大臣、私、国会議員の歳費二割削減と同時に、国会議員と同等の給与を受けている幹部職員の給与二割削減、実現するべきじゃないのかなと思うんですけれども、大臣の御見解、お聞かせ願えますか。”(平成26年4月11日 参議院内閣委員会)  ここではむしろ維新の会のような、身を切る改革を主張されている、とも読める。

生活の党時代から時代の空気を読んでシフトしてきた

 一方、生活の党時代になると、このように主張は変わる。 ”消費税をPDCAで評価した場合、私は、一旦消費税を五%に戻して、先々は廃止していく、財源は所得税の累進性を強めて資産課税を強化していくということで賄えると考えます。中小企業・小規模事業者の現状に大変お詳しい先生に、消費税を一旦五%に戻すというプラン、御意見を伺いたいと思います”(平成27年03月23日 参議院行政監視委員会)  実は、山本太郎氏の政治団体、「新党ひとりひとり」では、当初このような基本政策が書かれていた(2019年現在、この内容はれいわ新選組の基本政策に合わせたものとなっている)。 ”裕福な者も貧しい者も同じ税率? あり得ません。反対!だけでは呪文と同じ。まずは生活必需品非課税を勝ちとります。”(参照:基本政策 | 新党 ひとりひとり)  この文言を見ても、必ずしも山本太郎氏の消費税に対する観点は、固まっていたとは言えないだろう。  そして、生活の党時代から少しずつ、メインテーマをシフトしてきたのだ。  それは、時代の空気を感じる山本氏の優れた能力によるものではないだろうか。  山本太郎氏は当初反原発運動家として政治キャリアをスタートし、少しずつその政策を、消費税などの経済政策にシフトさせてきた、とわかる。  先日のインタビューで、山本太郎氏はこう答えている。 ”選挙戦で掲げた「原発即時禁止」については「そこに強い打ち出しを持ったら、多分、野党全体で固まって戦うことが難しい」と指摘。「電力系(の支持層)の力を借りながら議席を確保している人たちもいる」とも述べ、野党共闘の条件とすることには慎重な姿勢を示した。”(参照:「毎日新聞」)  しかし、かつてはここまで強く発言していたのだ。 ”枝野さん、細野さん。この国のすべての人を被曝させた民主党は戦犯です。首狩り族の一人として僕は行く必要がある。野田さんもそうです。ケジメをつけに行ってやろう。”(参照:田中龍作ジャーナル | 山本太郎氏出馬 「枝野・細野・野田は戦犯、僕は首狩り族になる」)  日本の反原発運動の旗手として当選した候補が、その6年間の議会活動の中で打ち出す政策のウェイトを大きく変えたことは、冷静に評論されなければならないことだろう。
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「全部のせ」れいわ新選組の政策
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