れいわ新選組と山本太郎氏論・ポピュリズムとリアリズムの狭間で

れいわ新選組はポピュリズムか

 山本太郎氏をポピュリズムと評することは、今の段階では適切ではない。  ご本人も語っている通り、山本太郎氏は、目的のために手段を選ばない政治家である、というのが私の結論だ。  それをどう評価するかは有権者次第だろう。  そして、支持者の一定層も、「手段を選ばないこと」を評価している。  可能な限り、どのような手段を使ってでも、総理大臣になるための最短ルートを通ってほしい、と願っているのではないか。  この前提にたてば、山本氏にとっては、国会も、れいわ新選組という政党も、手段にすぎない。  これが、おそらくある種の人にとっては「現実的」に見えるのではないか。  つまり、政策ではなく、手段の選ばなさに現実味を感じるのだ。  とにかく勝たなきゃ始まらない。選挙公約は選挙に勝つために作るものだ。  そんな身も蓋もない現実が、建前ばかりの政治家に疲れた有権者に評価され、それらをナマで打ち出すれいわ新選組に力を与えたのではないか。  同時に、山本太郎氏は、建前ではなく本音の人だ。 「政権を取るためならなんでもする」「総理になりたい」これは本音だろう。  同時に、「あなたを幸せにしたいんだ」というキャッチコピーに現れるように、弱者に向ける目も(いささかパターナリスティックな側面もあるとはいえ)本音なのだと思う。  あるいは、原発事故直後に感じた恐怖もまた、本音なのだろう。その率直な発言が評価され、彼を国会へと導いた。  しかし、その時本音であったことが、一年後本音とは限らない。興味関心は移り変わるのである。本音の人ということは、反一貫性の人ということでもある。  感情的な本音と手段の選ばなさ、これが現代的政治のリアリズムであり、れいわ新選組を押し上げたのではないか(私はこの点、大阪における維新の会の政治運動と共通するものを感じている)。  この文脈で考えれば、今回既成野党が票を減らしたことの原因も、見えてくるように思う。  しかし、リアリズム観点から読み解けるものが多くとも、山本太郎氏がどのような社会を目指すのか、何を理想とするのかは、実はよく見えてこない、  選挙に勝てる統一の主張として消費税廃止を主張しているのか、本当に心の底から消費税廃止により偶然の好景気が訪れ日本の諸問題が解決すると信じているのか、見えないのだ。  山本太郎氏だけではない。れいわ新選組は一体何を実現し、どのような国家を目指す政党なのか。これに簡潔に答えられる人はどの程度いるだろう。  そしてまた、議会軽視の姿勢が明らかな山本氏が本当にこの国の中枢についたとき、果たして健全な議会運営が行われるのかは大いに疑問が残る。  いずれにせよ、有権者が議会に目を向けなければ、議会は単なる票決のための場所となり、存在価値を失う。  れいわ新選組で当選された二人の新しい議員を含め、有権者が常に議会活動に興味を持ち、質疑が本当に質の高い、有権者の付託に答えるものであるか、監視することが重要だ。

政治家は監視され、チェックされるのも仕事

 政治家は監視され、チェックされるのが仕事である。  山本氏はTwitterで自らの取材発言が批判されると記者に責任転嫁するような態度が目立つ。(参照:アエラの記事について | 山本太郎オフィシャルブログ「山本 太郎の小中高生に読んでもらいたいコト」)  また、メディア出演が意図的に妨害されている、というような主張を否定せず、一部煽り建てるようにしている。  メディアから、あるいは有権者からの批判を受け止められないのであれば、山本氏は公党の代表たる資格がないと言ってもいい。  また、一部選挙の不正があるかのような発言もされている。 ”不正がないわけないですよ。不正しかなかったんだから、今までの政治。公文書改ざんしたりとか、隠蔽したりとか、8年分のデータなくなったりとか、イラクの日報の問題とか、不正しかないじゃないかって話ですよ。そういう連中が、選挙の時に不正しないか? ありえないでしょ、それ。選挙以外は全部不正しますけど、選挙だけは真っ白です、なんてありえないってことですよ。当然、何かしらの不正はやっているだろうけれども、その、はっきりとしたファクト、決定的なものが掴めない限りはなかなかそれ追及難しいんですよ。”(参照:【動画&文字起こし全文】れいわ新選組街頭演説会 19.7.18 福島・福島駅東口 | れいわ新選組)  山本太郎氏は当選以来、都合の悪い報道や事実を陰謀、読者の誤解、あるいは記者の力量不足と捉える傾向があるのではないか、と危惧している。  健全な批判を受け付けないのは、端的にとても危険だし、不正選挙が不可能なことなど、選挙実務に関わったことがある人間ならすぐにわかるはずだ。  山本氏は、あえて言うなら「反一貫性の政治家」である。その場で最適と思ったことを発言する。そこに過去も未来もない。  それを有権者も支持する。なぜなら常に「本気で戦っている」からだ。  つまり、発言の一貫性ではなく、姿勢の一貫性を見ているのである。妥協しない(と見えていること)に彼の支持の源泉があるのではないか。  しかしもはや、山本太郎氏は単なる一議員ではない。代表として政党要件を得た政党を率いるなら、過去の発言も含め検証されるのが当然だ。  健全な批判すら受け付けないポピュリズムになるか、あるいは健全な批判を受け入れ、強みにするリアリズムの道を行くか。今後の政治活動次第でないかと思う。  これまでアウトサイダーであった山本氏がメインストリームの政治家として総理を目指すならば、有権者もそれに応じて政治活動を注視すべきなのだ。 <文/平河エリ@読む国会>
Twitter ID:@yomu_kokkai ひらかわえり●国会をわかりやすく解説するメディア「読む国会」を運営する政治ブロガー。
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