創価学会を支持母体にする
公明党には、ポピュリズムになびく必要がありません。創価学会は、熱心な支持者集団であり、平和と誠実さを重んじる宗教団体です。公明党がその理念に忠実で、安倍政権に対して諌言できる勇気を持ち続ければ、ポピュリズム化した安倍政権・自民党の暴走を防げるかも知れません。ただ、議席数の差からすれば、ブレーキ役が精一杯で、それもズルズルと引きずられながらになるでしょう。
責任勢力としての
公明党の課題は、政権と自民党に対する諌言力の向上です。改憲という国民生活の改善と無関係なテーマに注力するのを追認するのでなく、厳しく注文をつけて、経済や福祉、社会保障などのテーマに政権と自民党の目を向けさせる必要があります。
立憲民主党は、結党の経緯から、ポピュリズムに批判的な文化を有しています。ポピュリズム的だった希望の党から排除された枝野幸男代表が、市民の支持を受けて立ち上げたからです。『枝野幸男、魂の3時間大演説』(扶桑社)でも明らかなように、やみ雲な支持を狙った言動や政策を避けています。ただ、市民の声で成立したからこそ、党内外からのポピュリズム化への圧力に抗せるのか、ポイントになります。
責任勢力としての
立憲民主党の課題は、民主的な党運営の確立です。選挙での候補者選定を含め、よりオープンで透明な運営手法を確立することにより、かつての主要政党のように中間団体(自治会や業界団体、宗教団体、労組など)を通じて民意を集約するのでなく、多様な民意を直接かつ丁寧に集約し、民意の取りこぼしを防いでいく必要があります。そのためには、党運営を担っている国会議員や地方議員の意識変革も必要になるでしょう。
共産党は、学習会と議論を重ねる党の運営手法と思想性の強さによって、ポピュリズムへの耐性を有しています。近年は、正論を追求する孤高の野党から、現実と格闘することも辞さない社会民主主義政党に変化しつつあります。共産党が政権に参画すれば、ほとんどの政党が政権与党の経験を有することになり、現実の制約を踏まえた効果的な政策議論が深化していくと期待されます。
責任勢力としての
共産党の課題は、他の政党との妥協に対するポピュリズム勢力からの批判に対し、現場の党員たちが耐えられるかどうかです。かつての孤高の野党の記憶がまだ新しいなか、新たにその位置を占めるポピュリズム勢力が出現した場合、足元から崩れていくおそれがあります。共産党幹部のリーダーシップが重要になるでしょう。
そして、
民主主義の発展を望む市民にとっても、ポピュリズムの台頭は正念場になります。これまでの多くの仲間や支援者が、ポピュリズム勢力になびくなか、政党に政策提言し、候補者人材を供給していく必要があります。批判を浴びながらの苦悩の道になる可能性も、覚悟しなければなりません。
次の政権交代で、野党勢力が政権運営に失敗した場合、おそらく数十年単位で、日本の民主主義は停滞するでしょう。立憲民主党と共産党、市民連合は、望むと望まざるとにかかわらず、その責任を負っています。
公明党を含めた3党と市民連合が、そこを改めて覚悟できれば、ポピュリズムは民主主義の活力となり、この参院選が健全な民主主義を再生する機会になったと、後に評価されることでしょう。