以前、こんな記事がありました(フェミニズムではなく広義のジェンダーの話ですが)。
LGBTが気持ち悪い人の本音 「ポリコレ棒で葬られるの怖い」 – withnews(ウィズニュース)
その記事の中に、こんな発言が出てきます。
”強迫観念として、ポリティカルコレクトネスに反してしまったら、僕の方が社会的に葬られるというのがあるんですよ”
この気持は、理解できなくもありません。自分が発言していることがどの程度社会的に正しいのか、と常にチェックされている感覚は、愉快ではないでしょう。
だからこそ、ポリティカル・コレクトネスなど気にせず好き勝手に放言する人にSNSなどで人気が集まる、という部分もあるのでしょう。
しかし、マーケティングはビジネスです。個人が勝手につぶやいたところで、それは誰かを不快にしたり傷つけたりするだけです。しかし、マーケティングにおいてはそうではない。
ビジネスである以上、誰がどのような事柄について不快に思うか、声を上げるのか、ということは、知っておかないといけないことリストの一番上にある、ということです。
そんなに複雑な話ではありません。
プロモーションなりPRなりマーケティングなりの仕事に関わりたいのであれば、人口の半分が不快になったり、傷ついたりすることは言わないようにしよう、ということでしかないのです。
自分がもし、何を発言して良くて、何を発言していけないのかわかっていないなら、それがわかるまで、黙っておくべきです。
この5年でどれほど女性が声を上げるようになったか、です。この5年、更にフェミニズムやエンパワーメントの概念は浸透するでしょう。
そのとき、何も勉強せずにいても、あなたは生き残れるでしょうか?
幸いにして、学ぶこと、耳を傾けることで、炎上するリスクは減らせます。簡単なことです。もし仮にマーケティングがビジネスであり、プライドの問題でないなら、そんなに難しい話ではないはずです。
もう一つ。
男性の経営層が会議室で考える「女性向けマーケティング」がもはや古いことがよくわかるのではないでしょうか。
これまでの「女性向けマーケティング」は、意思決定者が男性であることを前提にした上で、消費者としての女性をどう動かすか、という問題でした。
かつて「おんな・こども」と言われたように、女性は主体的な意思決定者として扱われませんでした。
マーケティングの意思決定の場に女性があまりに少ないことのリスクが、顕在化していると言えるのではないでしょうか。
マーケター個人がジェンダーや社会の問題を真剣に考えれば、企業も変わっていかざるを得ない、と私は考えています。
マーケティングには、世界を変える力はないかもしれない。しかし、世界の変化の先頭に立つことはできます。
そして、世界が進んでいく方向と、製品やサービスが発するメッセージをアラインさせることができれば、マーケティングは世界を少し、良くすることができる、と私は真剣に思っています。
世代ごとに、ジェンダー観は大きく違います。私より下の世代はもっと自由にジェンダーを捉えていると思うし、私も日々学ばなければいません。これからも多分いろいろと間違えるでしょうが、学ぼうと思っています。
フェミニズムについても、いろいろ良著はありますが、とりあえず一冊ということなら『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著・斎藤真理子訳・筑摩書房刊)をおすすめします。とてもいい本です。