様々なキャンペーンが立ち上がると同時に、フェミニズムはもはやかつての(不当な)イメージを脱し、クールでカッコイイものと捉えられるようになりました。(参照:
フェミニズムについて考えてみる〜COOLなイット・ガールズのフェミニスト宣言 – ガールのフェミニズム考 | VOGUE GIRL)
この変化において見逃せないのが、アーティストです。アリアナ・グランデやクリスティーナ・アギレラ、ビヨンセなどは力強いエンパワーメントソングを発表し続け、カルチャーの変化を支えました。(Fall In LineやBeautifulはとても良いナンバーです)
アリアナ・グランデだってフェミニズムの信奉者で、彼女以上にクールなものなんて存在しないのに、フェミニズムがクールじゃないわけないですよね。
現代のヒットチャートに乗る多くの女性シンガーは、ジェンダーやアイディンティティ、人種などの問題と向き合い、そしてそれらをテーマにした作品を発表し、そして音楽として大きな利益を生んでいます。(日本のヒットチャートのことは一旦忘れましょう)
ということで、女性を応援するような映画や音楽が売れるのと同時に、広告やマーケティング業界も変わってきました。
フェミニズムと広告(アドバタイジング)をあわせてフェムバタイジングという単語も生まれたほどです。(肯定的な文脈ばかりで使われているわけではありませんが)
2013年、世界でも大きく話題を読んだ CM が生まれます。
このダヴの「リアル・ビューティー・スケッチ」はカンヌで金賞もとりました。YouTube を通じて爆発的に拡散したことを覚えている人も多いはずです。
Always のキャンペーンも有名ですね。
「リアル・ビューティー」キャンペーン以降、エンパワーメントはごくごく一般的な概念として定着しましたし、更に「美容・ファッション業界」以外でもこのような流れは強まっています。
今年のカンヌでも、フェミニストによるアクションがグラスライオンを取っています。
同部門の審査委員長であるジェイミー・ロビンソンは「FORBES JAPAN」の取材にこう発言しています。
”男性社会の広告業界の中で、時には自分の性別を隠しながら仕事をしてきました。女性が少なかったため、周りの男性たちと同じように振舞おうとしたのです。しかし、5年前にやめました。ちょうどグラスライオンができた頃です。自分らしくあろうと自分自身を変えました。”(参照:
ポーランドの人気ポルノ雑誌を、フェミニストが大量購入した理由|FORBES JAPAN)
これらの事例が起きたことには、2つの理由があります。
一つは
「女性の社会的地位が向上し、消費者としての購買力が高まったこと」です。女性が働かない時代であれば、確かに広告はデフォルト男性向け、というのは合理的だったかもしれませんが、今はそうではありません。
もう一つ、
「女性が声を上げることは決して恥ずかしいことではない、むしろ声を上げなくてはいけない」という概念が浸透し、女性が不快に思うプロモーションやコンテンツが社会的に糾弾されるようになったことです。
いわゆる、炎上ですね。
フェミニズムとか言って、いちいちうるさいなあ、と内心思っている人もいるかもしれません。でも、考えてみれば、「これ嫌だなあ」と思っていた人は昔からいたんです。
例えば、話題を呼んだキャンペーンに「#KuToo」というものがありました。これは、パンプスやヒールなど、身体に負担をかけるフットウェアを強制する企業に対して行われたアクションです。(参照:
#KuToo呼びかけの石川優実さんに飛び交う理不尽なバッシング。当人が思い語る|HUFFPOST)
痛い、と思っていた人は昔からいたんでしょうが、今の時代になり少しずつ声が上がるようになったきた、という背景があります。
それは良いとか悪いとかいう問題とは離れて考えるべきです。声を上げることが評価される社会においては、誰かが声を上げるんです。
そういうものなのです。そうなっちゃったんだから、どう対応するか、ということを考えたほうが良いでしょう。