副作用が問題視されるベンゾジアゼピン系の睡眠薬・抗不安薬
「あなたはストレスで眠れなかったことはありますか?」
「日本人の49.9パーセントに不眠症の疑いがある」と日本睡眠科学研究所は分析している。しかし気軽に処方される睡眠導剤や抗不安薬によって、薬物依存に陥る危険性があることは、ほぼ知られていない。
特にベンゾジアゼピン(BZD)系睡眠薬や抗不安薬は依存性が高く、筋萎縮・転倒・骨折・眼瞼痙攣(※がんけんけいれん)などの副作用が国際的に問題視されている。
(※まぶたを閉じる筋肉が、自分の意思とは無関係に痙攣する病気)
世界保健機構(WHO)が1990年、「BZD系薬剤の服用は30日まで」と提言。欧米諸国では処方制限され、イギリスではBZD系薬剤専門の減薬離脱施設ができた。
2011年の国連レポートでは、日本がベルギーに次いで世界2位のBZD系薬剤消費国であることが明らかになった。その消費量は中国の45倍に相当し、日本の成人の20人に1人が摂取している計算になる。
日本のBZD系薬剤のうち35%は精神科や心療内科で処方され、残りの65%は精神科以外から処方される。向精神薬だと知らされずに、肩こりや皮膚の薬として処方される例もある。
消費量が日本の6分の1の米国では、BZD系薬剤の大量摂取による死亡数は年間1万人超。被害者による訴訟が多発している。
米国ではオピオイド系鎮痛剤が薬物中毒を誘発したとの訴訟の賠償金により、米製薬会社インシス・セラピューティクス社が2019年6月に経営破綻。現在もジョンソン&ジョンソン社などが訴えらえている。
米国連邦政府研究機関、国立薬物乱用研究所(NIDA)は、オピオイド系鎮痛剤の大量摂取者の30%がBZD系薬剤を処方されていると発表。「BZD系薬剤との併用が、オピオイドの危険性をさらに高めている」とトロントのセントマイケルズ病院ニカシング研究所のニコラス・ヴォゾリス博士も警告している。
BZD系薬剤の薬害は日本ではどの程度あるのか。日本では統計自体が存在しないため、正確な把握ができていない。